反対する人は人を不幸にしている……「選択的夫婦別姓」推進派に奢りはないか

国内 社会

  • ブックマーク

Advertisement

 今年3月3日、参議院予算委員会で夫婦別姓問題をめぐって議論が行われた。夫婦別姓派の草分け的存在とも言える社民党の福島瑞穂氏が、大臣として東京五輪担当と男女共同参画担当を兼ねる丸川珠代氏に対し、就任前に別姓に慎重な立場を示していたことを取り上げて追及した。丸川氏は「私には私の考えがあるのは確かでございますが、それはそれとして、今、大臣の任にございますので、私は大臣としてしっかり務めを果たしたいと思っております」などと答弁した。しかし、福島氏は納得せず「なぜ選択的夫婦別姓に反対なんですか」などと同じ趣旨の質問を5回も6回も繰り返した。

 丸川氏は担当就任前、自民党の国会議員有志が地方議会の議長などに対し、選択的夫婦別姓に賛同する意見書を採択しないよう呼びかけた文書に名を連ねていたが、福島氏はこれが許せなかったらしい。ついには「夫婦別姓を選択的に認めたからといって、転変地異が起きるわけでも、誰かが損をするわけでも、犯罪が増えるわけでもありません。認めたらいいじゃないですか」とまで言った。とても「良識の府」とは言えそうにない“論戦”にうんざりしながらNHKの中継放送を観ていたら、妙な発言が飛び出した。「丸川というのは旧姓ですよね。家族で姓が違うじゃないですか。家族の一体感、ないですか」。

元衆院議長が丸川珠代大臣への“追求”を「支離滅裂だ」と言った理由

 これに対し、丸川氏は「丸川というのは私の通称名でございまして(中略)私は、氏(姓)は大塚でございます」と淡々と応じた。

 妻が職場などで使っている通称名(姓)は、夫の姓と違うから「通称名」なのだ。福島氏はなぜ「家族で姓が違うじゃないですか」などと的外れなことを言ったのか。「夫婦別姓に反対なのであれば、旧姓を通称名として使うのではなく、戸籍の姓を使うべきだ」と言いたかったのだろうか。

 これには、さっそく元衆院議長の伊吹文明氏が反応した。伊吹氏は翌3月4日の二階派の会合で「支離滅裂な批判だ。通称の『丸川』を使ってうまくいってるなら別姓にする必要がない」と述べた。そして、「自分と異なる意見の人をあれだけ面罵したら民主主義は成り立たない」とも批判した。

 実は、福島氏と同じような発言は他にもあった。立憲民主党の参院議員である蓮舫氏の2月25日付けのツイッターである。「ご本人も旧姓を名乗り、夫婦別姓を貫いておられるのに」とつぶやいたのである。結婚後に旧姓を通称名として使うことが、なぜ「夫婦別姓を貫くこと」なのか。蓮舫氏の勘違いだろうか。いや、そうではあるまい。

 選択的夫婦別姓に慎重な国会議員らによって、旧姓の通称使用を拡大して法的根拠を持たせようという動きが出ているが、これを阻止しようと意識した発言であろうことは想像がつく。

次ページ:「選択的夫婦別姓に賛成7割」という調査はどこまで公正だったのか

前へ 1 2 3 4 次へ

[1/4ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。