英空母クイーン・エリザベス初の本格航海で、日本が韓国との関係を見直す契機になるワケ

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英国と香港の関係

 さて、言うまでもなく中国政府は現在、香港に対する弾圧を強めている。

 香港は1842年、清国が英国に割譲し、1898年からは英国の租借地となった。

 第二次大戦で日本が占領した後、1945年にふたたび英国の植民地となった。英国の庇護の下、経済発展を遂げた後、1997年、中国に返還された。

 それから20年以上が経過した2019年頃から、香港の民主化運動が活発化した。

 民主活動家が実刑判決を受け、独立運動家が英国に亡命。香港市民の亡命を受け入れた英国は1997年の香港返還以前に生まれた英国海外市民(BNO)パスポート保持者と扶養家族230万人に対する特別ビザの発給を開始した。

 BNO保持者はビザなしで渡航できるが、居住はできない。一方、発給を開始した特別ビザは5年間の居住と就労が可能で、5年後には永住資格を申請できるし、さらに1年延長すると、市民権を得る資格が与えられる。

 英国政府は今後5年間で30万人の香港市民が移住すると見ており、となると、英国で独立運動家が活動を開始する可能性もある。米国同様、英国は自由と民主主義を訴える人たちを見捨てはしないだろう。

韓国の日本への影響力は

 このような状況下で、英国が「クイーン・エリザベス」打撃群を東アジアに派遣することになったわけだ。

 英国はEUの発足メンバーとして日米よりも欧州を重視してきたが、20年1月、EUを脱退。かつて世界を制覇した大英帝国が孤立の道を歩み始めるかに見えたタイミングで、アジア・太平洋の英連邦諸国が、英国の朋友だった日米との軍事同盟に参加しはじめた。

 英連邦に属するシンガポールの公用語は英語だが、国のトップは人口が最も多い中国系で、シンガポールと中国語圏の香港、台湾のトップ同士は通訳を介することなく疎通できる。

 シンガポールと香港、台湾を合わせたGDPはオーストラリアに匹敵し、韓国のGDPと大差はない。言うまでもなく、彼らは「反日」を国是とはしていない。

 日本がこうした国や地域との連携を強めれば、韓国の日本への影響力は相対的に低くなる。

 いまだに韓国は、米中を天秤にかけるスタンスを維持している。それがもたらすのは、孤立しかないのだが。

佐々木和義
広告プランナー兼コピーライター。駐在員として渡韓後、日本企業のアイデンティティや日本文化を正しく伝える広告制作会社を創業し、日系企業の韓国ビジネスをサポートしている。韓国ソウル市在住。

デイリー新潮取材班編集

2021年5月4日掲載

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