小室さん親子が直面するジレンマ 「遺族年金」と「409万円」の両得狙いだったのか

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事実婚の「実体」がなかったなら

 この「事実上婚姻関係と同様の事情」という文句は、多くの法令(現在222件)で使われている頻出用語であり、遺族年金に限らず、児童扶養手当や介護保険をもらう際にもしばしば問題となる。

 この点について厚生労働省は、同一ではなく類似するケースの話ではあるが、国民年金を「もらう」場合の「配偶者」の認定基準として、

「事実婚関係にある者とは、いわゆる内縁関係にある者をいうのであり、内縁関係とは、婚姻の届出を欠くが、社会通念上、夫婦としての共同生活と認められる事実関係をいい、次の要件を備えることを要するものであること。

①当事者間に、社会通念上、夫婦の共同生活と認められる事実関係を成立させようとする合意があること。

②当事者間に、社会通念上、夫婦の共同生活と認められる事実関係が存在すること。」

 という通達を出している(日本年金機構理事長あて厚生労働省年金局長通知、平成23年3月23日)。

 この基準を踏まえるならば、「事実上婚姻関係と同様の事情」とはすなわち、夫婦生活を成立させようとする「合意」と、夫婦生活と認められる事実関係すなわち共同生活の「実体」があるかどうか、という点で判断するということになろう。

 婚約は将来結婚しようという約束のことだが、内縁は結婚しようという「意思」に加えて「共同生活の実体」を要求する。その「実体」があったのかなかったのかは、まさに今回の金銭問題における409万円がどういう性質のものだったかという判断と直結する。

 事実婚の「実体」がなかったということであれば、遺族年金の失権は認められないから、不正受給にはならない。しかし、「他人」から409万円ものお金を受け取るのは不自然であるから、あくまでも貸付金ということになり、返還しなければならないことになろう。

事実婚の「実体」があったなら

 これに対して、「実体」があったということであれば、夫婦生活に匹敵する共同生活を送っていたということで、409万円は贈与だったということになり、返さなくてもよい(しかも内縁関係での「生活費」相当の金銭授受に贈与税はかからない)。しかし、遺族年金の失権事由に該当することになり、不正受給になってしまう――。

 このジレンマ(二律背反)をどうするか。この点こそが、2010年9月に始まったA氏との婚約期間に、きちんと処理しておかなければならない問題だったはずだ。

 しかし、当時そうした解決がなされようとした事実は、現在までに報じられていない。その背景に、「遺族年金」も「409万円」も両方もらいたいという思いがあったのかどうか――。

 会計検査院は2017年、遺族年金の失権事由に該当しているのに失権届を提出しない受給権者に遺族年金1億6019万円が不適切に支給されていたとして(平成18年度から29年度分)、厚生労働大臣に是正改善の処置を求めている。公金支出に関わる「遺族年金の失権」は、軽い問題ではない。

 元婚約者A氏が「私と佳代さんの金銭問題と圭さんの結婚は別問題だ」と指摘しているように、今回の騒動において小室佳代さんの金銭問題は端緒に過ぎない。眞子内親王殿下のご結婚相手として小室圭さんがふさわしいか、その誠実性に多くの国民が程度の差はあれ疑問を感じ、ご結婚を心から祝福することに躊躇していることが本質だ。遺族年金の失権問題はその疑問と躊躇の象徴になりつつある。

 当事者間での解決金の支払いは、金銭問題を一気に収束させようとする狙いがあるのかもしれない。しかし、本質的な解決と言えるか、国民の納得が得られることになるだろうか。

デイリー新潮取材班

2021年5月4日掲載

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