リコカツ、紘一(永山)は超エリートだった… 自衛隊員のリアルな“カネと結婚”事情

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 紘一の場合、訓練でも捜索救難活動でも空を飛ぶと、最低1時間1200円の航空手当が出る。災害派遣時の手当は日額最高3240円。特定大規模災害などに対処する作業に関わると、最高1日4万円が支給される。

 また、紘一は自分の仕事を人一倍誇りにしているが、それもそのはず。メディックは航空自衛隊内の超エリートなのだ。空自内から検定で選ばれるものの、日ごろの勤務成績が優秀でないと受験すらできない。

 受験できても検定をクリアするのは難しい。500メートルをクロールで、12分59秒以内で泳がなくてはならない。水泳ではほかに立泳ぎ5分以上などが求められる。さらに水深4メートルで30秒以上、呼吸を停止することが要求される。

 体力検定もある。懸垂は10回以上、腕立て伏せは40回以上、腹筋は45回以上できることが条件。それだけではない。300メートルを64・9秒以内で走らなくてはならない。65キロの重量物を200メートル以上搬送することなども必須。

 これでも2017年度から採用基準が緩和されたというのだから、並みの人間には信じられない世界である。

 紘一は結婚式の翌日から日課のトレーニングを朝4時起きで始め、咲をうんざりさせた。だが、紘一は奇特な存在ではなく、メディックは日ごろから体を鍛え上げているのだ。

 航空救難団が出動する事例は、警察や消防、海上保安庁では救助が難しい時が大半。荒天や夜間が多い。だから「人命救助の最後の砦」とも呼ばれている。

 紘一は百里基地まで都内のマンション(どうやら目黒区内)から通勤しているが、これは実際には不可能に近い。曹長(紘一より1階級上)以下の独身自衛官は原則的に基地内にある隊舎(寮)で生活し、結婚後になって基地の外での居住が許可されるが、それでも隊が用意した官舎や近くのマンションや一戸建てに住まなくてはならないからだ。

 自衛隊法に基づく訓令にもこうある。

「居住場所は、勤務する場所から著しく遠距離であるか又は勤務する場所との交通が著しく不便である場所であってはならない」

 百里基地は、霞ヶ浦の北に位置し、都心から80キロ。車なら高速道路を使っても約1時間半かかる。電車だと東京駅から最寄りのJR常磐線・石岡駅まで早くて約1時間。さらに同駅からタクシーで約30分かかる。

「都心では居住許可が出ない」(同・元航空自衛隊百里基地勤務の男性)

 仮に異例の居住許可が出ようが、これだけ遠距離だと、捜索救難活動の緊急命令が出た時に紘一が困るはず。

 片や咲が勤務する出版社「泉潮社」のロケには渋谷区内恵比寿のビルが使われている。目黒区内から恵比寿まで通勤するとしたら、30分前後。咲は紘一に不満タラタラだが、居住地においては紘一が譲歩しているのだ。

 第1話の紘一は咲に連絡もせず、夜遅くに帰宅した。夕食も取らずに待っていた咲はふくれっ面で、「どんな任務だったの?」と尋ねた。ところが紘一は冷たく「それは話せない」と突き放す。国家機密だからという理由だった。

 確かに自衛隊法は、自衛官が職務上知った秘密を部外者に漏らすことを禁じている。家族も部外者。なので、話せなかったのだろうが、実情はというと、家族と仕事の話もするそうだ。

「本当の機密は話さないのでしょうが、かなりヤバイことも教えてくれました(笑)」(前出・父親が海上自衛隊幹部だった編集者)

 紘一は自衛官の鏡なのか、それとも頭が堅すぎるのか。

 航空自衛隊がドラマの舞台となるのは同じTBS「空飛ぶ広報室」(2013年)以来。空自は格好のPRになると考えたのか、収録に全面協力している。救難捜索機(U-125A)や救難ヘリコプター(UH-60J)などの実機が次々と登場するので、空自マニアには堪えられないだろう。

 さて、紘一と咲のリコカツの行方は?

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。1990年、スポーツニッポン新聞社入社。芸能面などを取材・執筆(放送担当)。2010年退社。週刊誌契約記者を経て、2016年、毎日新聞出版社入社。「サンデー毎日」記者、編集次長を歴任し、2019年4月に退社し独立。

デイリー新潮取材班編集

2021年4月30日掲載

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