“半沢色”満載、異例の続編「ドラゴン桜」、前作と作風がガラリと変わった事情

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 TBSの連続ドラマ「日曜劇場 ドラゴン桜」(日曜午後9時)が4月25日に始まった。ヒットした2005年の作品の続編なのはご存じの通り。今回も好評だが、前作と作風が随分と違うため、SNS上には違和感を訴える声も並ぶ。これは「シン・ドラゴン桜」と呼ぶべきなのか?

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「ドラゴン桜」の続編は江口のりこ(41)の顔面アップから始まった。偏差値32の龍海学園高を運営する龍海学園の理事長・龍野久美子役である。

「あなた、本気でおっしゃってるの?」(久美子)

 教頭の高原(及川光博、51)が、入学者減を打開するため、東大合格者の輩出を目指すべきだと訴えたところ、久美子はこの冷たい言葉を口にした。

 顔面アップはこのドラマのチーフ演出家を務める福澤克雄氏(57)の特徴的な構図だ。福澤氏がやはりチーフ演出家だった「半沢直樹」も顔面アップが多かったのは記憶だろう。また江口も及川も「半沢直樹」の出演者である。

 落ちこぼれ受験生を東大に導く弁護士・桜木健二(阿部寛、56)が主人公なのは一緒だが、続編は福澤色に染め抜かれていると言っていい。

 もっとも、作品にチーフ演出家の個性が強く出るのは当然のことだ。映画も監督によって色づけられる。それでもSNS上には「前作とかなり異なるので違和感がある」といった言葉が並ぶ。

 確かに前作はライトな学園コメディの色合いが強かったものの、今作はシリアス調。ここまで作風が変わる続編はあまり例がない。背景には前作を実質的に作っていたのが制作会社のMMJだったという事情がある。

 前作のチーフ演出家はMMJの塚本連平氏(57)。やはりヒットメーカーでテレビ朝日「特命係長 只野仁」(2003年)などを撮った。「なぜ続編はMMJじゃいけなかったの?」という声も上がりそうだが、同社はもうTBSのドラマをほとんど作っていないのである。

 同社が最後に作ったTBSのドラマは表舞台を離れた長瀬智也さん(42)主演による2017年の「日曜劇場 ごめん、愛してる」。その後、両社が仲違いしたわけではない。2014年にテレ朝がホールディングス化したことに伴い、MMJを連結子会社にしたことが影響している。他局のドラマの制作数が、そう多くはないからだ。

 日本テレビホールディングス系のAX-ON、TBSホールディングス系のTBSスパークル、フジ・メディア・ホールディングス系の共同テレビなども他局のドラマを作るものの、数は少ない。やはり親会社の仕事を優先させている。

 そんな背景もあって制作がMMJからTBS本体に変わり、その上、誰もが認める局内のエースである福澤氏が撮るとなったら、前作と似た作風は考えられない。福澤氏のプライドも許さないはずだ。

 では、TBS本体が制作することになった時、なぜ福澤氏がチーフ演出家になったのか。それは阿部寛が主演した「下町ロケット」(2015年)を撮ったことが大きい。2人の間には信頼関係がある。

 福澤氏らしい演出は第1話から随所に見られた。例えば冒頭の久美子の言葉は職員会議でのものだが、会議場がやたら広く、「半沢直樹」における東京中央銀行の役員会議室を想起させた。

 また、前作の照明は明るかったが、続編は暗め。これも福澤氏らしい。暗い照明で登場人物の表情に陰影が生まれ、内に秘めた感情がより伝わりやすくなっている。ちなみに照明を含めたTBSの撮影技術は民放随一とされている。

 ストーリーも福澤色が鮮明だ。倒さなくてはならない敵が何人も用意されているところである。その敵とは自由教育を掲げる久美子、どうしようもないワルたちを陰で操る生徒・瀬戸輝(髙橋海人、22)、東大に落ちたことから桜木を逆恨みしている米山圭太(佐野勇斗、23)――。

「半沢直樹」も「下町ロケット」も「ノーサイド・ゲーム」(2019年)も、福澤作品には主人公の前に敵が次々と現れる。その敵を主人公が倒すことにより、視聴者側はカタルシスをおぼえた。今回もそれは踏襲されたのだろう。

 無論、意表を突く展開も複数あった。例えば、誰かが校舎内をオートバイで走ることは予告編で知らされていたが、それは不良生徒によるものだと思われていた。TBS「スクールウォーズ」(1984年)を見て育った世代でなくてもそう読むはずだ。それが実際には真逆。不良生徒を桜木がオートバイで追い掛けた。予想外の展開で面白かった。

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