「ポンコツ男子」がモテる時代? 櫻井翔に松坂桃李に東京03角田…今期ドラマに見る男性像の二極化と変化

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「あざとい」がポジティブな言葉になったように、「ポンコツ」も褒め言葉になるのかもしれない。今期ドラマ、「ポンコツ」男子が大活躍である。

 例えば「ネメシス」の櫻井翔さん演じる探偵は、仰々しい前口上は述べるが謎解きはイマイチ。「大豆田とわ子と三人の元夫」で東京03・角田晃広さん演じる2番目の夫は、ストローもろくに使えず年下に馬鹿にされる始末。「あのときキスしておけば」は月末に初回放映だが、松坂桃李さん演じるスーパーの店員は仕事も恋も段取り下手な様子。独特のルーティンにこだわり女性の扱いに慣れていないという点では、「リコカツ」の永山瑛太さん演じる自衛隊員も「ポンコツ」かもしれない。そして相棒や相手役を務める女性陣は、みな優秀でしっかり者という設定である。

 春ドラマの初回視聴率を見てみると、上位3位は「イチケイのカラス」13.9%、「桜の塔」13.5%、「ネメシス」11.4%の順だ。(ビデオリサーチ調べ、関東地区)共通するのは恋愛ドラマではないことと、男性が主演ということである。「ネメシス」は広瀬すずさんとのW主演だが、彼女をして「いい意味でドラマにダサさを出してくれているのが櫻井さんの役」と言わしめる。その櫻井さんの好演あってか、「#ネメシス」は放送中にTwitterトレンドが1位に。公式のフォロワーも12万人と、ドラマアカウントの中でも頭ひとつ抜けている。

 ちなみに「ネメシス」では、勝地涼と中村蒼が扮する「あぶない刑事」オマージュのコンビも登場する。サングラスに肩パッド入りのロングコート、所構わず銃をぶっ放す本家の様式美は、令和ではいっそう滑稽に見える。彼らもまた、ある種の「ポンコツ男子」なのだろう。

 一方、同じポンコツ男子枠でも、角田さんや永山さんの演じる役はちょっと違う。仕事ではしっかりしているのだ。けれども、女性のこととなると途端に不器用になる。距離感の詰め方が急で、服も無頓着。デートで連れて行くのは大衆食堂。都会的で洗練された妻(元妻)たちは首をかしげながら付き合うが、彼女たちの戸惑いにも気づかない。彼らの振る舞いにイライラする人もいるだろう。が、スレていない純朴な人だと胸打たれる人も多いのではないか。自分なりのこだわりがあるだけで、お金や女性にだらしないわけではない。今期ドラマのポンコツ男子たちは皆、要領は悪いが人が良い。だから周りに人が寄ってくる。たとえ仕事やエスコートが無様であっても、のほほんとしている彼らは、精神の安定したイイ男にも見えてくる。

「エリート男子」モノが描く「男らしさ」の呪縛

 しかし恋愛ドラマとなると勝手が違う。特に今期の恋愛ドラマ、やたらと「エリート男子」が登場するのである。

「恋はDeepに」の綾野剛さんは大企業の御曹司、「着飾る恋には理由があって」の向井理さんは若き敏腕社長。「ラブファントム」での桐山漣さんは超優秀なホテルマン。「レンアイ漫画家」の鈴木亮平さんは、生活面ではポンコツだが、国民的ヒット作を手がける天才漫画家としての顔を持つ。

 そして彼らに振り回される、ピュアな頑張り屋ヒロインというのも王道の展開である。私にだけ、弱い部分を見せてくれるツンデレ王子様との恋。それは憧れのシンデレラストーリーであるのと同時に、男性の生きづらさと表裏一体でもある。

 男は稼いでナンボ、男は弱音を吐いてはいけない、男は女性をリードする存在であるべき……ずっとドラマの中で描かれてきた、「男らしさ」の呪縛。ただその呪縛を解くのは、お姫様とのキスではなく、かつては脇役にすぎなかったポンコツ男子たちなのではないか。

 ご機嫌なポンコツ男子と、不機嫌なエリート男子。何か失敗をした時に、リカバリーが早いのは前者だろう。自分が笑われないよう相手をコントロールするのではなく、笑われながら協力を引き出せる。どんなに有能な人も、愛される人にはかなわない。各ドラマで描かれるポンコツ男子たちは、固定化された男らしさの枠をほどいているように見える。

 日テレやTBS、フジテレビは、49歳以下にターゲットを絞ると方針発表した。いわゆるバブル世代に象徴されるような「よく飲みよく稼ぎよくモテる」俺様男子とは違う、新しい男性像を描くチャンスなのではないだろうか。今春ドラマにはその兆しを感じる。女心をくすぐる単なるダメンズではなく、息苦しさを抱える男心にもエールを送れるような、愛すべきポンコツたち。彼らの活躍を見届けたい。

冨士海ネコ

2021年4月25日掲載