トイレのハンドドライヤーを禁止していたのは日本だけ? “ずさんな論文”を鵜呑みにした専門会議

国内 社会 2021年4月21日掲載

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 4月13日、日本経済団体連合会(経団連)は新型コロナウイルスの感染を防ぐためのガイドラインを改定、トイレに設置されているハンドドライヤーの使用停止の項目を削除したと発表した。昨年5月、政府の専門家会議でハンドドライヤーの感染リスクが指摘されたため、経団連はガイドラインに使用停止を盛り込んでいた。そもそも感染リスクの根拠とされたのは、イギリスのウエストミンスター大学が2016年に行った実験だが、実はこれ、きわめて問題のあるものだったという。

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 専門家会議がハンドドライヤーに感染リスクがあると言い出したのは、ウエストミンスター大学の研究チームが応用微生物学専門誌『Journal of Applied Microbiology』(2016年2月号)に発表した論文を根拠にしていた。

 研究チームの実験は、手に付着したウイルスがどれだけ飛散するかを調べるものだ。まず、手袋をはめた手に大腸菌を死滅させるという「MS2ウイルス」を塗り付ける。その後、ペーパータオル、温風式ハンドドライヤー、ジェット式ハンドドライヤーの3つの方法で手を乾かす。トイレの様々な場所には、大腸菌を塗布したプレートを設置。MS2ウイルスによって殺された大腸菌の集団が残す斑点(プラーク)を数えると、付着したMS2ウイルスの量がわかる仕組みだ。

不適切な実験

 実験の結果、ジェット式ハンドドライヤーは、温風式ハンドドライヤーの約60倍、ペーパータオルの約1300倍のプラークを発生させた。さらに、ジェット式ハンドドライヤーが放出したウイルスの約70%は、床から60センチほどの高さに集中、飛距離は3メートルにまで到達したという。

「手にウイルスを付着させたまま洗わずにハンドドライヤーを当てたら、ウイルスが飛び散るのは当然のこと。アメリカのアリゾナ大学の研究チームは、ウエストミンスター大学の実験は不適切だと指摘しています」

 と語るのは、経団連の正木義久・ソーシャル・コミュニケーション本部長。

「ウエストミンスター大学の実験結果が公表された後も、イギリス政府はハンドドライヤーの使用を推奨しています。イギリスの電機メーカーのダイソンもハンドドライヤーによるウイルス飛散実験を行っていますが、問題ないという結果が出ています。そもそもウエストミンスター大学は、ペーパータオル業界から支援を受けているのです。結局、ペーパータオルを使ってもらうための意図的な実験だったことがわかりました」

 政府の専門家会議は、そんな杜撰な実験をもとにしてハンドドライヤーは感染リスクありと指摘したことになる。

「今のところ、ハンドドライヤーの使用を中止した国は見当たりません。WHO(世界保健機関)もハンドドライヤーを推奨しています。昨年の夏に問題があることが分かったので、経団連として改めて三菱電機に実験を依頼しました」(同)

 手を洗ってハンドドライヤーで乾かすことで、どれくらいのウイルスが飛沫(水滴)に乗って目や鼻に入るかというシミュレーションを行った。

「水滴に色をつけて実験を行いましたが、目や鼻に入ることはありませんでした」(同)

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