議論百出の「ゆたぼん」中学問題、「不登校新聞」の編集長はどうみているのか

国内 社会 2021年4月17日掲載

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ホームスクーリング

 では、不登校の問題に詳しい専門家は、この論争をどのように見ているのだろうか。「不登校新聞」の編集長、石井志昴氏は、この問題の専門家として知られる。YAHOO!ニュース個人に掲載されている略歴を引用させていただく。

《1982年東京都生まれ。中学校受験を機に学校生活が徐々にあわなくなり、教員、校則、いじめなどにより、中学2年生から不登校。同年、フリースクール「東京シューレ」へ入会。19歳からは創刊号から関わってきた『不登校新聞』のスタッフ。2006年から『不登校新聞』編集長。これまで、不登校の子どもや若者、親など300名以上に取材を行なってきた》

 石井編集長は「そもそも、ゆたぼんくんが不登校になった理由が、ネット上などで曲解されたという経緯をご存知ない方もおられるでしょう」と指摘する。

「ゆたぼんくんは不登校の理由を『宿題をしたくないから小学校に行きたくない』と説明しました。『そんな理由で不登校を正当化するな』と批判を集めたのが“炎上”の原点だったはずですが、これは誤解だったのです。小学校低学年ぐらいですと、不登校の理由を『宿題が嫌だから』と説明する子供は珍しくありません。低年齢のため言語能力が未発達だったり、ストレスの原因を言語化することに精神的な苦痛を覚えたりするため、不登校の理由をしっかり言葉にすることができないのです。実際、ゆたぼんくんは後に、担任教師とトラブルがあったと明かしています」

 ホームスクーリングに関する批判も、「日本では欧米ほど普及していないことが背景にあると思います」と言う。

「台湾でデジタル担当大臣を務めるオードリー・タンさん(39)や、グラミー賞を受賞した歌手のビリー・アイリッシュさん(19)は、ホームスクーリングで教育を受けました。ある程度成長し、『勉強したい』と考えた人の場合、9年間の義務教育を1年で履修することが可能という報告もあります。家庭で義務教育の過程を学ぶことは、決して困難なことではないのです」

意思の尊重

 独学で勉強を続けることは可能でも、友人が必要なのではないかという意見も多い。ホームスクーリングより、フリースクールに通うべきだという考えだ。

「フリースクールの素晴らしいところもたくさんあります。とはいえ、集団生活に苦痛を感じている子供に無理やり通わせることは、学校への通学を強制することと同じです。友人と接しないと社会性が育たないという不安はよく耳にしますが、親と子供が会話し、夫婦の会話を子供が聞くことでも、充分にコミュニケーション能力は育つことが明らかになっています」(同・石井編集長)

 石井編集長は「不登校経験者のうち、85%の人が高校に進学したという興味深いデータもあります」と言う。

「小学校や中学校で不登校を経験しても、大半の人が高校に進学したという事実は、もっと知られていいと思います。2017年に完全施行された教育機会確保法は、不登校になった場合、学校への復帰を前提とせず、多様な学びの機会を与えることで支援するという基本方針を確認しました。ゆたぼんくんが『中学校には行きたくない』という意思を表明したことは、尊重されるべきでしょう」(同・石井編集長)

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