和歌山市立「小園健太」だけではない… “丑年ドラフト”で指名された公立高卒の名投手たち

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97年の丑年

 97年の丑年ドラフトでは、阪神が2位指名した水戸商(茨城)の井川慶の名が挙げられるだろう。全国の舞台とは無縁だったが、この年のドラフトでは平安(現・龍谷大平安=京都)の川口知哉(元・オリックス)や鳥取城北の能見篤史(現・オリックス)と並んで“高校生左腕三羽烏”として期待された逸材であった。

 プロ4年目の01年に先発ローテーションに定着して9勝を挙げると03年にはエースとして20勝をマークし、阪神18年ぶりのセ・リーグ優勝の立役者の一人となった。05年にも13勝し、再びチームをリーグ優勝に導いている。07年にメジャーへ移籍。12年にオリックスに入団し、日本球界に復帰した。引退を明言してはいないが、現在はチームに未所属の状態である。それでも日米通算95勝、1332奪三振という成績は大成功の部類といえよう。

09年の丑年

 最後は、12年前の09年ドラフトである。この年は清峰(長崎)のエース・今村猛が春の選抜で躍動した。全5試合に先発し、4完投、3完封。44回を投げて被安打32、奪三振47、失点自責点各1で防御率0.20と抜群の安定感をみせ、チームをけん引。見事優勝投手に輝いている。ドラフトでは広島東洋から単独1位指名され、プロ2年目から主にセットアッパーとして現在も活躍中だ。

 特に16年は67試合に登板と、中継ぎの柱としてフル回転。22ホールドをマークするなど、チームの25年ぶりのセ・リーグ優勝に大きく貢献している。日本シリーズでも6試合すべてに登板し、シリーズ最多となる4ホールドを記録したのであった。翌17年も68試合に登板し、セットアッパーやクローザーを務めるなど、勝利の方程式の一角を担った。23セーブ、17ホールドを挙げ、2年連続のリーグ制覇に一役買っている。ところが18年以降は成績が下降。昨シーズンに至っては、1軍定着後としては自己最低の6試合登板に終わり、防御率も12.46と最悪の数字となってしまった。

 それでも昨シーズンまでで計431試合に登板し、21勝30敗、36セーブ、115ホールド、防御率3.46は期待通りの働きぶりといっていい。今季の完全復活に期待したい。

 さて、市立和歌山の小園である。この先人たちに続く逸材であることはもはや間違いなく、夏の県予選に向けて再びその動向に注目が集まるはずだ。また、彼以外の公立校の好投手の成長にも期待したいところでもある。春の選抜組なら、小園と投げ合った県岐阜商の左腕・野崎慎裕や21世紀枠で出場した八戸西(青森)の右腕・福島蓮、ベスト4進出校の天理(奈良)相手に7回9奪三振をマークした宮崎商の右腕・日高大空あたりに注目だ。

 さらに、現段階では全国的にはまったく無名の逸材が彗星のように現れる可能性もある。公立校出身の好投手たちに今から要注目である。

上杉純也

デイリー新潮取材班編集

2021年4月15日掲載

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