「室伏広治」が「10万人に1人」の難病・悪性脳リンパ腫に 骨髄の細胞移植が必要

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「最後の移植だけが怖い」

 気になるのは治癒の可能性だが、さる脳外科医は、

「決して超難病というわけではありません」

 と前置きして説く。

「50歳以下であればほぼ完治する病気です。50歳を超えても、65歳までなら70%は治りますが、65歳を超えると危険です。高齢者は骨髄の細胞移植を受けられないからです」

 幸い室伏長官は46歳だから、治療をすれば命に関わることはなさそうだが、この話からわかるように骨髄の細胞移植が必要だという。先の病院関係者が言う。

「室伏さんは3月中旬、自身の骨髄の細胞を取り出す手術を受けました。『スッキリ』に出演する前だったかと。その後、イベントをいくつかこなした後、4月半ばに再び入院する予定です。その際は、まず抗がん剤を大量に投与した後、取り出した骨髄の細胞を点滴で移植します。自家末梢血幹細胞移植という治療法で、池江選手のように他人の骨髄の細胞を移植する“同種移植”にくらべ、自分の骨髄の細胞を移植する“自家移植”は、副作用のリスクが低いと聞きます」

 ただし、よほどのことでは悩みを見せない鉄人の室伏長官が、この移植治療についてだけは、

「“最後の移植だけが怖いんだ”と、弱みを見せていたと伝え聞きました」

 と、前出とは別の病院関係者が言う。もっとも、先のスポーツ庁関係者は、

「順調なら、ゴールデンウィーク明けには完治し、退院できると聞いている」

 と話し、それを受けて先の脳外科医が解説する。

「この治療の場合、点滴で骨髄を移植した後、抵抗力がゼロになる。だから2週間ほど無菌室で入院するはずです。ただ、そこを乗り越えられれば完治すると思います。論文によれば、この治療法での再発率は0%だといいます」

 免疫にかかわる病気なので、現在、病室には大きな空気清浄機を入れ、対応しているという。完治、0%と心強い言葉が並ぶが、この脳外科医は、話を聞くかぎり一点だけ、心配が残ると、こう話す。

「室伏さんは元気に五輪を迎えられると思いますが、免疫力の問題は少し心配です。退院後は当分の間、抵抗力が落ちるので、大勢の人がいるところを歩くのは勧められません。特にいまはコロナの問題がありますから、そこはリモートを駆使するなどして、周囲が温かく支えてあげる必要があるように思います」

「全力で努めてまいります」

 いずれにせよ、室伏長官自身が病気の公表を望んでいたのであれば、それを尊重するという選択肢はなかったのだろうか。

 むろん、ここまで職務と闘病は両立している。室伏長官自身、このまま職責を全うしたいという強い意志を持っていると推察される。だが、そうだとしても、病気を抱え、過酷な治療に耐えながら弱みは見せず、闘病の事実を伏せて公務を遂行し続ければ、生来の身体がどれほど頑健であっても、文字通り身が持つまい。

 心配なのは、骨髄の移植が無事に終わったのちである。抵抗力が落ちているのに、間近に迫った五輪のためにあえて人前に出続ければ、身に危険が迫る可能性がないとは言えないようだ。そうなれば室伏長官自身ばかりか、東京五輪の開催国である日本のリスクにもつながるだろう。

 特に室伏長官は、国家機関の高官で、五輪の開催準備を担う公的な重職の本丸にいる。その健康状態が国民の利益に直接影響する立場なのだから、本人が希望したのであれば、病気は公表したうえで、可能な範囲で「日本の顔」として職務を果たしてもらう。そうできれば一番よいのではなかろうか。

 とはいえ、病気は高度にプライベートな問題。室伏長官本人の意思を確認すべきと考え、闘病について本人に直接尋ねた。すると、

「通常通り、スポーツ庁を通してください」

 という返答だったので、スポーツ庁政策課に質問した。闘病についての具体的な問いには、

「個人に関する情報であるため、回答を差し控えさせていただきます」

 とのことだったが、希望も得られた。体調不良が東京五輪に影響を与えることへの懸念に対し、室伏長官の見解を聞きたい、という問いには、力強い答えが返ってきたのである。

「これまでも公務に支障をきたさないよう努めており、今後もオリンピック・パラリンピック東京大会の開催に向けて、関係者と一丸になって全力で努めてまいります」

 病には負けない、これしきの病気で公務に支障をきたすことはない、という鉄人の宣言であろう。池江選手の復活は、ご難続きの五輪に花を添えるに違いない。それに室伏長官が続いて、東京五輪が真に成功することを祈らざるをえない。負けるな、室伏!

週刊新潮 2021年4月15日号掲載

特集「負けるな鉄人 スポーツ庁長官『室伏広治』難病との苦闘」より

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