小室さんの理詰め文書の疑問点 弁護士が理詰めで指摘する

国内 社会

  • ブックマーク

Advertisement

そうとしか読めない

〈多くの報道において借金トラブルが残っているとされていますが、このような経緯ですから母も私も元婚約者の方からの支援については解決済みの事柄であると理解してまいりました。〉

 ポイントは文の前半の「多くの報道において借金トラブルが残っているとされていますが」という部分である。

「が」という逆接の接続助詞で結ばれていることから、「このような経緯ですから母も私も元婚約者の方からの支援については解決済みの事柄であると理解してまいりました」と続く後半の内容は、前半の内容と(1)同一時点又は同一次元における、(2)対立・相反する内容であると理解するのが自然である。

 そして、「借金トラブルが残っている」ことと、「解決済み」であることとはまさに対立・相反する内容であり、「多くの報道において借金トラブルが残っているとされてい」るのは「2019年文書」を公開した時点のこと(現状)であるから(「残っているとされています」というのは現在形である)、後半の内容は、「2019年文書」公開時点における小室氏の認識内容(ひいては主張内容)であると理解するのが当然である。というよりも、そうとしか読めない。

「理解してまいりました」という表現は、それ自体としては時点がやや曖昧な表現ではあるが、「借金トラブルが残っているとされてい」るという(2019年1月時点での)現状を逆接の接続詞で否定する位置付けであることからすれば、「これまでもそう理解してきたし、今でもそう理解している」という主旨であるとしか解釈できない。過去の一時点までの認識を述べたところで、現状を否定することはできないからである。

小室氏自身が自覚しているのではないか

(3)認識が変化したことが説明されていない

 また、仮に「2021年文書」において主張されるとおり、「解決済みの事柄である」との認識が「元婚約者の方との間に認識の食い違いがありそうだと考えるようになった時点までのこと」であるならば(すなわち、認識が変化したというならば)、端的にそのように説明されるべきである。

 たとえば、「2019年文書」において、「解決済みの事柄であると理解してまいりましたが、平成29年(2017年)12月以降に金銭トラブルと言われている事柄が週刊誌で数多く取り上げられたことで、元婚約者の方との間に認識の食い違いがありそうだと考えるようになりました」などと記載されていれば「誤解」など生じる余地がない。

 しかし、認識が変化したということは「2019年文書」では一切説明されていない。

(4)「2021年文書」での主張の態様は不適切である

 そして、「2021年文書」のうち、「解決済みの事柄であると理解してまいりました」との表現をもって「解決済みの事柄である」と主張していると理解するのは誤解であると主張する箇所において、「多くの報道において借金トラブルが残っているとされていますが」との前半部分は引用されていない。

 前半部分を引用せず後半部分のみを記載して過去の一時点までの認識を述べたものであるとの主張を展開しているが、上記のとおり後半部分の主旨を検討する上で前半部分の内容は非常に重要であるから、このような引用の方法は不適切である。

 解決済みの事柄であると主張していると理解するのは誤解であるという主張内容と整合しない前半部分を意図的に引用しなかったと非難されてもやむを得ないだろう。

3.結語

 以上に指摘したとおり、小室氏が「解決済みの事柄である」と主張していると理解するのはごく自然なことであり、それは誤解であるという主張には相当に無理がある。百歩譲っても、「2019年文書」はそのように「誤解」されて当然の内容であった。

「2021年文書」は全体としてはよく出来た法的文書であるが、この部分の主張に無理があることは、小室氏自身が自覚しているのではないかと推測する。 
 
 そして4月12日になって、小室氏が「解決金」を支払う用意があることが明らかとなった。これが事実なら、解決金を支払うという強い動機があって、「2021年文書」が公表されたとの指摘も成立し得るだろう。

小川尚史
2006年、東大法学部卒、09年、弁護士登録。2019年、日比谷パーク法律事務所パートナー弁護士に就任。

デイリー新潮取材班編集

2021年4月14日掲載

前へ 1 2 次へ

[2/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。