コロナ禍で帝国ホテルが建て替え、何が変わる? 総事業費は2千億円超

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 日本を代表するホテル御三家。言わずと知れた帝国、オークラ、ニューオータニの三つだが、なかでも最も長い歴史を誇るのが帝国。1890年創業で、1923年にはフランク・ロイド・ライト設計の新館を開業。70年完成の現東京本館は3代目となるが、このたび建て替えられることに。

 帝国ホテル広報によると、

「本館が竣工してから51年、83年に開業したタワー館も38年が経ちます。2007年に三井不動産の資本参加を得た時から、友好的なパートナーとして建て替えを視野に協議し、このほど決定にいたった次第です」

 ホテルの営業は続けながら順次着工。まずはタワー館から24年度に着工し、30年度に完成予定。新タワー館はオフィス、商業施設、サービスアパートメントが入り、三井不動産との共同事業になる。そして本館の工事は31年度から36年度まで。総事業費は2千億~2500億円を見込む。

 とはいえ帝国の21年3月期連結決算は148億円の赤字予想で、客室稼働率は1割台、宴会場の利用も前年比7割減というから、コロナ禍の影響をモロに受けた形。

 よくぞこれだけ大規模な投資を決めたものだが、

「建て替えを決断するのは定保(英弥社長)にとっても難しい状況での判断だったと思います。コロナのような感染症による被害は今後も起こりうるものとして想定しており、ソーシャルディスタンスなどを取りやすい、感染症対策も備えた施設に更新するという点では、今が決断の時でした」(同)

 顧客争奪戦を考えても必須の判断だったと言うのはホテル評論家の瀧澤信秋氏。

「東京では90年代以降、外資系ホテルが続々と開業しましたが、どこも当然、部屋は清潔なうえ、広くて天井も高い。その点、日本の御三家はハード面で後塵を拝していたのも事実です。格式と伝統をベースにした日本の“おもてなし精神”を誇っても、快適な宿泊を提供するにはまずハコが大事。帝国も部屋を随時改装してきましたけれど、構造までは変えられません」

 求めるものは?

「19年に建て替えられたオークラはスタンダードタイプが48平米。同クラスが現状32平米の帝国には、それを超えてほしい。ホテルは文化ですから、誰もが伝統や歴史を思い起こせる仕掛けがあると嬉しいですね」

 残るニューオータニはどう動くか。こちらは築56年だが、現時点で公表できるような予定はないそうだ。

 まずは世界に冠たる帝国の、新たな装いに期待。

週刊新潮 2021年4月8日号掲載

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