検察審査会は賭け麻雀で黒川弘務氏だけを「起訴相当」 法の下の平等はどこへいった?

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「感情論」に走りがちな検察審査会

 検審は「前例」より「感情」に重きを置いて判断しがちだと、高井氏は批判する。

「基本的には検察官は前例を見て、起訴すべきか不起訴にすべきか考えます。前例との不均衡にならないように、法の下の平等に反しないように決める。だから、検審も同じように前例との均衡を考えなければならないはずなのですが、はたして検審はそこを十分に考えたのか、甚だ疑問です。単に検事長ともあろうものがけしからん、コロナで自粛中にけしからんという意識だけで、『起訴相当』を出したんじゃないのかと思うのです」(同)

 検察審議会を巡っては「強制起訴」したものの、無罪判決が出るケースが多発し、問題視されてきた。花火大会の見物客11人が死亡した兵庫県明石市の歩道橋事故、JR福知山線脱線事故、福島第一原子力発電所事故では、警察署の副署長や経営陣らが「業務上過失致死傷罪」に問われ、検察の捜査では「嫌疑不十分」で不起訴処分となったものの、検審によって強制起訴された。いずれも「免訴」や「無罪」判決が出ている。

「私はかねがね『嫌疑不十分』で不起訴となったケースについては、検察審査会の審査対象から外すべきだと言ってきました。検察官が捜査して起訴に足りうる証拠を得られなかった事案について、無理に起訴しても結局、有罪にすることは難しいからです。今回の場合は『起訴猶予』であり、『嫌疑不十分』だった福島原発事故の東電旧経営陣などのケースと同じ括りにはできませんが、“あれだけ重大事故が起きたのだから、東電には責任を問うべきだ”という『感情論』で判断したという意味においては同じだと思います」(同)

黒川氏の今後は……

 かくして、幕を閉じることになった賭け麻雀問題。長期間、「被告」の立場で裁かれる「強制起訴」に比べれば、1回の罰金は払えば終わる「略式起訴」で済んだ黒川氏の負担は軽くも見えるが、「ことはそう簡単ではない」と前出の検察関係者は語る。

「有罪になったということには変わりありません。黒川氏が今後、弁護士登録をしようと思っても、それを理由に弁護士会から弾かれる可能性がある。すぐに再就職も難しいでしょうし、黒川氏はしばらく無職で暮らさなければならないでしょう」

 もちろん、身から出たサビである。だが、一方で今回の判断が「法の下の平等」を覆しかねない前例となってしまったことについては、冷静に分けて考える必要があるのではないか。

デイリー新潮取材班

2021年4月5日掲載

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