検察審査会は賭け麻雀で黒川弘務氏だけを「起訴相当」 法の下の平等はどこへいった?

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「起訴相当」と「不起訴相当」は“雲泥の差”

 だが、市民団体が検審に処分の不服申し立てをしたため、その判断が待たれることになった。昨年12月、検審が出した結論は、黒川氏を「起訴相当」、他の3人を「不起訴不当」。同じ賭け麻雀をしながら、メンバーによってまったく違う判断が下されることになった。

「この議決には雲泥の差があります。検審が『起訴相当』か『不起訴不当』を議決すると、検察官は再捜査しなければなりません。『不起訴不当』の場合は、再び『不起訴処分』になると、それで終了となります。しかし、『起訴相当』の場合、再び『不起訴処分』となれば、もう一度検審にかけられることになる。そこで二度目の『起訴相当』が出ると、強制的に起訴されることになるのです」(同)

 今回、特捜部が黒川氏を略式起訴に踏み切った理由は、検審の「強制起訴」を恐れたからだと言われている。

「強制起訴となれば、公開の法廷で裁判が開かれることになり、場合によっては2、3年と騒動が長引くことになる。早く幕引きを図りたい検察としては、そんな展開だけは何としも避けたかった」(同)

今後は「賭け麻雀立件」で権力が暴走する可能性も

 だが結果として、略式命令とはいえ、1000点100円の賭け麻雀で人を罪に問える前例を作ってしまったのである。元東京地検特捜部検事の高井康行弁護士は、今回の処分のきっかけとなった検審の判断は、「虎を街に放つようなもの」と指摘する。

「これまで家の中で、1000点100円程度の賭け麻雀をした容疑で立件された前例はありません。このような前例を作ってしまったことによって、今後は街中の雀荘で行われている賭け麻雀を、いつでも立件できるようになった。家の中で親族だけで卓を囲む家族麻雀だって立件対象となりうるわけです。例えば、記者たちも記者クラブの仲間で賭け麻雀をやっているでしょう。そこに踏み込めば現行犯逮捕できるようになった。理屈だけで言えば、検審は権力が気に入らない記者を社会的に抹殺することだって可能になる道を開いたとも言えます」

 また、他の3人の記者を「不起訴不当」とし、黒川氏だけを「起訴相当」とした検審の判断について、「法の下の平等に反する」と指摘する。東京地検特捜部は再捜査の結果、3人の記者らについては、そのまま「不起訴処分」とした。

「検審は同じ賭け麻雀をしたというのに、なぜ検事長とマスコミ人を区別したのでしょうか。検事長は法の番人だからけしからんというなら、第四の権力と言われているマスコミ人だって同じように罰すべき。彼らも政治家を批判するような、範を示さなければならない立場の人間です。そこを分ける必要はなかったと僕は思います」(同)

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