「既婚女性社員と腕を組んで…」 オムロン副社長、電撃退社の裏に“パワハラ”“女性写真”との関係

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 京都財界の雄だった3代目社長が新型コロナ感染症で急逝して1年。体温計などヘルスケア商品で知られる東証1部上場のオムロンが揺れている。突如、次期社長候補だった役員の退任を発表。その陰に、看過できぬ「女・パワハラ」問題が横たわっているというのだ。

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「人を大事にする社風は現社長と辞めた副社長のせいで様変わりしてしまいました。特にうちの3代目が亡くなってから、拍車をかけるように……」

 オムロンの現役社員はため息とともにそう吐露する。京都市に本社を置き、いまや、年間売上高約6千億円、総従業員3万人弱を誇る世界的企業に何が起きているのか。

 同社の前身は1933年に初代社長の立石一真氏によって設立された立石電機製作所である。長男が2代目を継いだ後、87年、三男の義雄氏が3代目として社長に就く。「人を大切にする経営」が義雄氏の信条で、「会社は創業家のものではない」として社名も工場のあった京都の御室(おむろ)という地名にちなみ、オムロンに変更するほどだった。また業績面でも海外売上を伸ばし、世界的な電子機器メーカーにまで成長させ「中興の祖」「京都財界の大物」とまで言われた。

 2003年に創業家ではない人物に社長の座を譲り、本人は会長に就くが、名誉顧問となっていた昨年4月、新型コロナウイルス感染症により急逝してしまう。

 それから1年。3月22日にオムロンが大規模な人事を発表した。とりわけ社内外で注目されたのが、宮永裕(ゆたか)・執行役員副社長の退任だった。冒頭で現役社員が言及した“副社長”のことである。

 経済部記者が解説する。

「オムロンの主力は体温計などのヘルスケア部門ではなく、IAB(インダストリアルオートメーションビジネス)と呼ばれる工場のオートメーション化支援事業です。そのIAB部門のトップだったのが、宮永副社長でした。現在の山田義仁社長は就任してまもなく10年になるので、次期社長候補の筆頭と目されるようになりました」

 退任の理由について、同社関係者が声を潜める。

「今回の退任について、山田社長は社内外に副社長の申し入れによる退任と説明していますが、それは事実と違います。実際には彼の常軌を逸したパワハラ問題と女性問題があったのです」

 それによりこの数年、優秀なベテラン社員が続々と辞めていく事態となっていたという。

「例えば、IAB部門で月に1度ある事業戦略会議では、集まった20名ほどの社員に対し、罵詈雑言を浴びせていました。最初はおとなしく座っていても、時間が経つにつれ、貧乏ゆすりをしだし、最後は発言している部下をふんぞり返るような姿勢で、睨みつけている。ほとんどヤクザですよ」(同)

 そこから、気に入らない部下に対する面罵が始まるのだ。

「ネチネチと文句を言い始めて、大阪弁で“死ねボケが!”“なんで目標が達成できないんや”“ここから飛び降りろや”“生きる価値ないやろ、お前はハエや”などと罵倒するのです。あまりの剣幕に会議後、トイレで吐いてしまう同僚もいました。会議以外でも2、3時間の説教はザラで、早朝から携帯に電話がかかってきて怒鳴られることもありました」(同)

 中には体調を崩し、心療内科に通院する社員も出る中、ある社員にはこんなメールが送り付けられた。

〈●●さん、白痴のバナナ共和国の典型。さらにその策もアホ丸出しの低レベル。こんなんで挽回できるつもりか?〉

 事情に詳しいオムロンOB社員によれば、

「彼は自身の部下たちに対し、障害者差別につながる言葉を頻繁に浴びせていました。こうした言動は3代目が亡くなり、会社の“重し”となる方がいなくなったことでさらに激化していったのです」

「4階級特進」

 さらに、女性関係も問題視されていた。妻帯者の宮永副社長と同じく既婚者で同社の課長級職員だった40代前半の女性社員との“仲”である。

「コロナによる緊急事態宣言下でも毎週金曜の夜は二人でディナーに出かけ、仲睦まじく腕を組んで歩く様子が目撃されていました。東京に出張へ行く際も二人で日程を合わせていたので、不倫関係ではないかと疑われていたんです」(同)

 社内でも彼女は“特別待遇”だったと、冒頭の現役社員が嘆く。

「宮永はパワーポイントの体裁に非常にうるさく、少しでもフォントを間違えたりすると、罵倒し始めるのですが、その女性社員がいつもと違うフォーマットでパワポの資料を出しても“こういうのもアリかな”と笑って済ませる。社内メールでも彼女のことを下の名前に“ちゃん”付けで呼んでいました」

 人事面ではより一層、露骨だった。

「実は彼女はこの春の異動でIAB部門のマーケティングセンタ長という執行役員の一歩手前のポストに“抜擢”される予定で、内示も受けていました。これは宮永による人事と言われています。課長級からそのポストまでは社内の役職でいうと、4階級特進という通常ではありえない大出世。しかも、現センタ長は3代目、義雄さんの息子さんで、彼を大分県の関連子会社へと飛ばし、自身の“愛人”をそのポストに据えようとしたのです」(同)

 まさか、創業家一族を追い出し、会社を支配しようとしたのだろうか。

「山田社長はこうした行為を知りながら黙認してきました。社長は宮永を経営面での知恵袋としていて、経営計画を宮永に作ってもらうなど、頭が上がらない存在だった。しかし、あまりの横暴ぶりに対する社員からの声を無視できなくなり、社長が引導を渡した結果が今回の退任でした。結局女性社員の異動もナシとなりましたが、退任理由であるパワハラや女性問題は公表されず、自身の責任を免れるために、社長がこれらを隠蔽したと言われているのです」(先の関係者)

 創業家が築いてきた社員からの信頼はもろくも崩れ去った。

 さて、山田「現」社長と宮永「元」副社長に話を聞こうとするも取材に応じず。かたや、仲睦まじかったはずの女性社員は、

「(人事については)私の職能です。この件は会社から外に漏らすなと言われているのでお話しできません」

 当のオムロンに一連の問題を尋ねたが、

「本人の申し出による退任です」

 と、木で鼻を括ったような回答を繰り返すばかりだった。

 部下への過度な“熱”血指導のかたわら、年下の女性社員に“お熱”を上げた元副社長とそれを必死に庇った現社長。どうやら、行為の「危険度」までは体温計で測れなかったようだ。

週刊新潮 2021年4月1日号掲載

特集「創業者も泣く『オムロン副社長』電撃退社の裏に『女・パワハラ』」より

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