「吉本」「ワタナベ」が高校設立 授業内容、高卒資格は?

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 新年度を迎えるにあたって、芸能事務所の意外な取り組みが話題を呼んでいる。

「学校経営に乗り出す事務所が現れています。俳優やタレント、芸人を育成する養成所の類ではなく、高校卒業資格が手に入る文科省お墨付きの高等学校です」

 とは事情に詳しい関係者。

「これまで芸能界御用達の高校といえば、昨年死去した俳優の三浦春馬が通った堀越高校や、山口百恵がOGの日出(ひので)高校(現・目黒日本大学高校)でした。いよいよ大手事務所が学校を持つ時代になったわけです」

 4月に開校するのは約6千人もの芸人やタレントが所属する、吉本興業の「吉本興業高等学院」。運営母体のよしもとアカデミー代表・上田泰三氏が言う。

「昨今の教育の多様化を受けて、芸人やダンサー、ユーチューバー、構成作家、デジタルクリエイターなどを志す生徒を対象に、スタートすることにしました」

 吉本といえば、多くの人気芸人が輩出している養成所のNSC(吉本総合芸能学院)が有名だが、

「NSCの入所希望者の大半は18歳以上ですが、中には中学を卒業したばかりという子もいました。その場合は“高校を出てからでもいいんじゃない?”と、やんわり再考を促していました。とはいえ、エンタメは早く身に付ければそれだけ早く活動を始められますし、10代の3年間に基礎を学ぶ意味は大きい。いずれは在学中にブレイクする生徒の登場を期待していますが、仮に志望する進路が変わった場合でも、高卒資格があれば大学や専門学校に進学もできます」

 これなら突然、息子が“芸人になる”と宣言しても母ちゃんが泣くことはあるまい。入学試験は書類選考を経た面接のみで、

「あくまで適性が大切なので、入学時に漫才などの実技を見ることはしません」

 実際の授業では、現役のプロデューサーや構成作家、芸人たちが教壇に立つ。

「お笑いの基礎や番組プロデュースの方法、ダンスや演技のパフォーマンス力などを一線で活躍するプロたちから学んで頂きます。たとえば、2008年にM-1グランプリで優勝したお笑いコンビ『NON STYLE』の石田明も講師の一人。『漫才の作り方』という講座を持つ予定ですよ」

 さながら“お笑いのエリート養成校”だが、国語や数学などの授業はどこで?

「いわゆる普通科目の授業や試験は吉本ではなく、提携している通信制高校にて履修して頂きます」

 つまり、実学と座学は別々の学校で学ぶ仕組み。この点はワタナベエンターテインメントが4月に開校させる「ワタナベNオンラインハイスクール」も同様だ。

「以前から、若い世代にエンタメ教育を提供する新たな環境整備を検討していたところ、図らずもコロナ禍によってリモートの活用が進み、授業のオンライン化を実現できました」

 とは担当者。すでに東京、大阪、名古屋で高卒資格が取得できる「渡辺高等学院」を運営しているが、

「この3校は俳優や歌手志望の生徒が中心なので、歌やダンス、演技のレッスンは対面で行っています。一方、新設校ではそれらを含めたすべての授業をオンラインで受講できます」

 卒業後の進路は芸能界デビューに限らず、一流大学への進学や企業への就職まで幅広く考えているという。

「地方在住の方にもエンタメ教育の提供が可能になる上、才能豊かな若者との出会いも期待できるんです」

 新規事業の実利に期待。

週刊新潮 2021年4月1日号掲載

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