羽生結弦が自ら課した高すぎる壁、世界選手権で「クワッドアクセル」に挑むか

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「跳びたかった」

「もちろん、北京オリンピックに向けての(日本の出場)枠もかかってくると思いますし、全力で自分の役割を全うしたいなと思います」

 昨年末に行われた全日本選手権で圧倒的な演技をみせて優勝、世界選手権代表に選ばれた羽生結弦は、記者会見で、最大の3枠を勝ち取る決意を語っている。

 フィギュアスケートも他の競技同様、コロナ禍を免れず、今季は多くの試合が中止になってしまったが、来季に行われる北京五輪の出場枠がかかる世界選手権(3月24~28日、スウェーデン・ストックホルムで開催)は、選手や関係者を隔離する“バブル”方式を採用して、無観客で開催される予定だ。

 羽生に関しては、4回転アクセルに挑むか否かが常に注目されてきた。2018年平昌五輪で連覇を果たした翌日に臨んだメダリスト記者会見で、羽生がこれから目指したいこととして挙げたのが、誰も跳んだことがない4回転アクセル(クワッドアクセル)の成功だった。19年グランプリファイナルの公式練習では、着氷しなかったものの、世界初の大技に挑む姿をみせている。

 羽生は試合本番で4回転アクセルを組み込んだことはまだなく、今季の全日本でも回避した。全日本開幕前に行われた報道番組のインタビューで、羽生は「跳べるイメージとかも具体的に膨らんできていて、後はそれに体を乗せられるか、乗せられないか」と手応えを語っている。

 また、全日本では4回転アクセルを組み込まない判断をしたことについて「率直に言えば、(4回転)アクセル跳びたかった」としながらも「ただ『それだけじゃない』というのを、一人で練習していて改めて気づいて」とも口にしている。

トリプルアクセルすら……

「このプログラムに対して、4A(4回転アクセル)入れて安定させられるのかとか。それでグジャグジャになったら、このプログラムに対してどんな気持ちでやるんだ、っていうのとか。ちょっと大人になったんですかね、そういう割り切りをできるようになりました。自分がやるべき演技は、今回(全日本)のフリーとショートである程度出せるんじゃないかなとは思います」(フジテレビ『Live News α』 20年12月23日放送より)

 そして、その言葉通り、羽生は全日本で見事な滑りを披露する。ロックナンバーに乗るショートではクールに決め、フリー『天と地と』では凜とした滑りで、戦国武将の上杉謙信を演じた。二つのプログラムの世界を完璧に創り上げることができたのは、転倒など大きな破綻がなく、滑らかにすべての要素がつながったからだ。

 その背後には、4回転アクセル習得とプログラムの完成という二つの目標を目指す上での葛藤があった。全日本のフリーを滑り終えた羽生は、「そもそも4回転アクセルって、跳べるのか」と悩み、「トリプルアクセルすら跳べなくなった時期があった」と吐露している。その発言の直前にみせた滑りからは想像できない不調は、昨年10月の終わり頃まで続いていたという。

「4回転アクセル練習すれば、どんどん他のジャンプも崩れていくし、駄目になっていくし、足も痛くなるし」

 味わった苦しみをにじませた羽生は、言葉を継いだ。

「そういった悪いスパイラルに入っている中で、やっと自分が長年経験してきたこと……怪我したこと、平昌(五輪)のこと、後は自分が上手く出来た時のこととか、そういったものを消化して、ベテランらしく、ちょっとはいい演技、いい練習ができるようになったんじゃないかなとは思っています」

 その翌日に行われた世界選手権代表発表会見。コロナ禍により海外選手と今季初めて戦うことになる世界選手権に臨むにあたり、意識する選手と目指す順位を問われた羽生は「一緒に戦ってみないと実際分からないというのが、正直なところです」と率直な気持ちを口にした。

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