「ウチ彼」VS「知ってるワイフ」「モコミ」、2人の女性脚本家の評価は真っ二つのナゼ
ウチカレは全面、青い。
「放送枠の差もあるでしょう。『知ってるワイフ』は木曜22時枠で、前作の『ルパンの娘2』は平均5・7%でした。『モコミ』の土曜23時枠は、『おっさんずラブ』のヒットで知られますが、あの時でも平均4・0%でしたからね。問題は、作品としての評価です。奇しくも月9ドラマでメジャーとなった2人ですが、今やその作品は真逆と言ってもいいほど。ヒューマンドラマの橋部さんはその姿勢に変わりなく、『知ってるワイフ』のSFだったり、『モコミ』の特殊能力を描きつつも、今様の愛を描いています。一方、北川さんの最近の作品は時代と噛み合っていないように思います」
「ウチの娘は、彼氏が出来ない!!」は、売れっ子恋愛小説家でシングルマザーの水無瀬碧(菅野美穂)と、しっかり者だがオタクの娘・空(浜辺美波)の恋模様を描いたコメディだ。“神様”としては王道のはずだが……。
「デイリー新潮でも冨士海ネコさんが『「ウチカレ」で大苦戦…北川悦吏子の恋愛ドラマはもうオワコンか?』(2月19日配信)で書いていましたが、オワコンと言われてしまうほど、恋愛観が古いという声が少なくない」
それは当人も自覚しているのか、第1話で脚本に書き込んでいた。文芸誌の編集長(有田哲平)が、水無瀬(菅野)の娘と知らず空(浜辺)に話しかけた時のことだ。
有田:知らない? 水無瀬碧、恋愛小説の女王。若い子は知らないか。「夢の音が聞こえる」とか「明日君に会えたら」とかさ。昔は一世を風靡したんだけどね。
浜辺:今は?
有田:どうかなあ……。
浜辺:オワコン?
有田:はっきり言うね。
「自虐的ともいえる脚本でした。彼女が恋愛をしていた頃はバブル期ですから、今とは時代が噛み合わないということもあるでしょう。ただ、それよりも気になるのが、自己投影、自己顕示が過ぎることです」
それは前作、NHKの朝ドラ「半分、青い。」(18年上期)から顕著だという。
「朝ドラは“北川悦吏子劇場”と言われるほど、彼女自身が投影されていました。舞台は彼女の出身地である岐阜で、ヒロイン(永野芽郁)は左耳が不自由なことも彼女と似ていました。ヒロインが2週間に2回振られたのは、まさに彼女自身が体験したことと告白もしています」
そこまで、よかったが、
「“ウチ彼”では、それに拍車がかかっています。主人公の名前からして碧(あおい)ですし、職業はかつて一世を風靡した恋愛作家で、有田の勤める出版社は『半分、青い。』にも出てきた“散英社”ですからね。もはや“全面、青い”と呼びたくなるほど。さらに出演者も彼女が大ファンだった中村雅俊や豊川悦司、有田も『半分、青い。』からの続投です。パロディのつもりかもしれませんが、少し安易なのでは。大学生の娘がオタクという設定も、彼女の娘が超がつくほどのオタクだそうです。また沢村一樹に至っては、裏番組の『突然ですが占ってもいいですか?』(フジ)のレギュラーを、一時降板して出演していますからね。なんだか、女王様も大変だなあと……」
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