セブンの「店内揚げカレーパン」は絶品 なぜコンビニの“あげもの店”化は進むのか

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 コンビニのホットスナックコーナー、いわゆるレジ脇で売られる「あげもの」は、今やおなじみの商品だ。その代表格であるファミリーマートの骨なしチキン「ファミチキ」は1年で約1億8000万個も売れると聞けば、いかにコンビニの「あげもの」が人気であるかわかる。最近は新たな方向の商品も目立つ「コンビニのあげもの」事情を、流通アナリストの渡辺広明氏が取材した。

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 最近、私がもっぱらはハマっているのが、セブンイレブンの「スパイス薫るビーフカレーパン」(税込149円)という商品です。ここ1週間で3個は食べていますね。パン売り場に置かれている商品ではなく、ホットスナックとして販売されています。「揚げ鶏」や「からあげ棒」と同じく、店内で揚げているカレーパンなんです。買う時には「温めますか?」と尋ねられます。

 基本的には作り置きなので、揚げたてとはいきませんが、やはり袋に入って売られるカレーパンとは、食感が違います。当たり前ですが温かく、サクッとしていて、ジューシーで……。リピーターは私だけではないでしょう。

 しかし読者の方には「こんな商品、見たことない」という方が多いかもしれません。実はこのカレーパン、今のところ地域限定の商品なんです。販売地域は「北海道、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県、茨城県、栃木県、神奈川県、長野県、東海」。私の自宅近所のセブンでは、先月から取り扱いが始まりました。どうやら2月頃から、店内揚げのカレーパンを扱うお店が増えたようです。

 SNS上には、2019年の時点で店内揚げカレーパンの目撃談があるのですが、その後に「なくなった」という報告もあって、セブンとしても試行錯誤の段階だったのだと推察します。今のところ東京都内の店舗では売られていないわけですが、都内のとあるセブンのオーナーによると、

「カレーパン、好評だと聞いています。フライヤーで揚げるのですが、焼き鳥を陳列していた常温什器(レジ横の販売ケースをイメージしてください)で販売します。うちもそうなのですが、カウンターが狭くて常温什器を置いていない店舗で売るとなると、なかなか頭が痛い商品かもしれません……」

 とのことなので、店舗のスペースの関係で、簡単に全国で売れる商品ではないのかもしれません。とはいえ、かなり好評のようですから、全国展開に期待したいです。

 全国的に売り出す際の課題としては、他のあげものと違い、調理の仕方が異なるであろう「パンを揚げる」というオペレーションを、どう他に活かすか。甘い「揚げパン」や「ピロシキ」などの派生商品は、カレーパンほど万人受けしない印象も持ちます。

クリスピーチキンにセール、「あげもの」に力を入れるコンビニ

 コンビニの「あげもの」をめぐる話題では、ファミリーマートの創業40周年企画として3月2日に登場した「クリスピーチキン」(145円)の順次販売休止がニュースになりました。公式発表によると〈販売開始2日間で、合計200万食を突破〉〈ファミリーマートのホットスナックにおいて類を見ないペース〉がその理由で、本家のファミチキを上回る売れ行きだそうです。

 クリスピーチキン、私も食べましたが普通のファミチキに比べ衣が固く、食感の違いが楽しいです。ケンタッキーフライドチキンの「カーネルクリスピー」を頭に置いた商品だと感じました。ファミマはローソンの「からあげクン」のような一口サイズの商品「ポケチキ」も出していますから、チキン関係の商品には、かなり柔軟な展開を見せていますね。このクリスピーチキンも、ファミチキファンなら食べてみたいと思わせる商品でしょう。

 ファミマのクリスピーチキン投入に対抗する狙いか、ローソンはおなじみ「からあげクン」の1個増量キャンペーンを3月2日~8日の時期に行っていました。また、セブンでは3月2日~7日まで、ファミマは3月9日~22日までの期間で、「あげもの」を対象としたセールを実施しています。

 同じようなタイミングで、コンビニ各社が「あげもの」に力を入れているわけです。なぜでしょうか。

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