20代の俳優で異例の超高速出世「吉沢亮」の双肩にかかる「新・1万円札の男」

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万札を眺めるたびに

 そして、最大の問題作が「GIVER 復讐の贈与者」(テレ東・2018年)だった。

 復讐代行業者として暗躍する、感情が欠如した青年・義波という役どころ。実に後味の悪いというか、胸糞悪いドラマ(あ、誉め言葉ね)ではあったが、「ただのイケメン」でも「足りない青年」でもなかった。

 暴力や残虐な行為に一切の感情をもたないが、ターゲットに近づくためには、女装や詐称、脅迫行為を淡々と行う。復讐の意図を無表情で伝える冷淡さもあれば、人間をメッタ刺しにする狂気もあり。

 キャラ変も激しいが、自身も凄絶な過去を抱え苦しむという、多面性を要求される役だった。陰がある・闇を抱えるどころではなく、闇そのもの。吉沢亮のポテンシャル、ここでパカッと開眼(したような気がする)。

 この義波役があまりに強烈で、脳内に残像がこびりつく。吉沢=闇が似合うとインプット。ところが、それをさらっと剥がしたのが、天使のような天陽君、そう朝ドラ「なつぞら」(NHK・2019年)である。

 ヒロイン・なつ(広瀬すず)に思いを寄せるも、なつの夢を最優先して身を引く。控えめで物静かで理解があって、しかも若死に……思い出に残る理想の男・天陽君。

 芋畑で麦わら帽子を空に投げて亡くなるシーンは、NHKのスタッフから寵愛されているとしか思えないほど美しく、芸術的な最期だった(芋畑だけど)。最近はナレ死も多いというのに。

 というわけで、王道のイケメン、そして陰キャから漆黒の闇、さらには天使。テレビドラマだけ見ていくと、すごいふり幅。で、ここにきてまさかの渋沢栄一。予測不能。

 これだけ吉沢亮について書いてきたものの、2話まではほぼ子役(小林優仁)がメイン。躍動感あふれる子供時代から、成長して登場した吉沢は、知的好奇心旺盛でとにかくよくしゃべる、ハイテンションな青年に。

 剣術は苦手、体当たりは得意。本に夢中でドブに落ちるほどの一点集中・視野狭窄系。はつらつとした吉沢亮、悪くない。

 ドラマでは主軸に描かれてこなかったので、日本における渋沢栄一像は今後の吉沢亮にかかっている。課題は、めっちゃ長生きした渋沢栄一をどこまで演じきれるか。

 万札を眺めるたびに、吉沢亮を思い浮かべるようになるかどうか。責任重大だね。

吉田潮(よしだ・うしお)
テレビ評論家、ライター、イラストレーター。1972年生まれの千葉県人。編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。2010年より「週刊新潮」にて「TV ふうーん録」の連載を開始(※連載中)。主要なテレビドラマはほぼすべて視聴している。

デイリー新潮取材班編集

2021年2月28日掲載

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