JTが本社機能を一部スイスに移転 実はたばこ大国、喫煙に寛容なお国柄

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 スイスといえば、観光に時計に金融業。その地に日本たばこ産業(JT)が本社機能を一部移すそうな。

「日本国内のたばこ事業はこれまで港区の本社で担当し、海外事業はジュネーブに拠点を置くJTインターナショナル(JTI)が担っていました。これが来年1月以降、国内事業もJTIの傘下となります」(JT広報)

 たばこは国内での販売本数687億本に対し、海外では4357億本。もとよりグローバル事業なのだ。ただし物理的移転はなく、

「あくまで組織体系の中でたばこ事業の戦略や意思決定などのプロセスをJTIに統合するもの。日本人社員の転勤もありません」

 そもそもなぜ海外事業はスイスが拠点だったのか。1999年に買収した、キャメルなどのブランドで知られる「RJRI」の本部がジュネーブだったことがひとつの理由だそうだが、実はスイス、たばこ大国なのである。JTと並ぶ世界3大たばこ企業、フィリップモリスは統括本部と研究開発本部を、ブリティッシュ・アメリカン・タバコも現地法人を置き、人口約850万人中、たばこ産業従事者は優に1万人を超える。

「スイスのたばこ産業の歴史は古く、ナポレオン政権下のフランスで、国有化を嫌ったたばこ企業が逃れてきたのが最初です」

 とはJETROジュネーブ事務所の話。後には多国籍企業への優遇税制も誘引材料になったという。『ブランド王国スイスの秘密』の著書もある経済ジャーナリストの磯山友幸氏いわく、

「スイスは、ヨーロッパの中でたばこの規制も緩いんです。受動喫煙の防止やたばこ広告の制限を謳うWHOのFCTC(たばこ規制枠組み条約)に署名こそしていますが、批准はしていません。どんなことも国民投票で決めるお国柄ですが、たばこ産業の従事者も多いことから、たばこには寛容なんですよ」

 たばこのパッケージに有害性を警告する禍々しい写真を貼り付ける義務もない。喫煙可となる年齢も州ごとに16歳だったり18歳だったりと異なるが、ジュネーブ州ではその年齢も決められていないというから大人な国。喫煙率は約20%。屋外での喫煙は自由だ。

 もっとも先のJETRO事務所によれば、広告や喫煙場所の規制なども徐々に厳しくなっており、連邦議会では「たばこ規制法」をつくる動きもあるという。

 愛煙家の楽園、いつまで。

週刊新潮 2021年2月25日号掲載

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