すでに時代遅れという声も…プロ野球のキャンプはなぜこんなに古めかしいのか

スポーツ 野球 2021年2月14日掲載

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 2月1日に始まったプロ野球のキャンプは、すっかり実戦が多くなる時期となった。コロナ禍によって無観客の中で行われたが、各球団の主力選手、注目のルーキーなどの動向は連日スポーツニュース、スポーツ新聞によって伝えられ、シーズン開幕が待ち遠しいファンも多いだろう。

 毎年同じように行われているキャンプだが、そのやり方を改めて考えてみると疑問に感じる点が少なくない。以前は海外でキャンプを行うチームがあったが、現在はどの球団も一軍は沖縄か宮崎に集結し(今年は巨人の一部選手は東京ドームで実施)、4勤1休、もしくは5勤1休のペースで日程を消化していく。最初のクールは実戦的な練習は少なく体作りが多めで、徐々にそれが実践重視となっていくのが通例だ。

 よくキャンプで言われる言葉が「シーズンを通じて戦える体(体力)を作る」というものである。陸上のトラックや階段などを走り込み、投手であれば球数を投げ、野手であればバットを多く振る、ノックを多く受けるなどして1年間野球が問題なくできるようになる体力を養うというのだ。

 しかし、今年から就任した巨人の桑田真澄投手コーチ補佐も、2月の走り込みが8月の暑い時期に生きてくることはなく、日々の練習が重要だということもコメントしている。キャンプの時だけ体を追い込んでも、シーズン中の体力が養えるというわけでは当然ないだろう。体力づくりが目的なのであれば、わざわざ全員集まって行う必要はなく、自主トレ期間を延ばした方が効率的なこともあるだろう。

 また、気になるのは全体練習のメニューだ。投手の投げる球数についてはそれぞれの選手によってある程度任されているが、それ以外のメニューに関しては基本的に同じものを消化していく。シートノックや走塁練習を見ていても、自分がプレーに関わらない時は立って見ているだけという場面が非常に多い。

 野球は自身が直接プレーに関わらない時間が長いスポーツであるため、どの年代でもこのようなシーンはよく見かけるが、トッププロであるNPBでも変わらないというのが正直な印象である。もちろん守備の連係強化や、サインプレーなどの意思統一を図るための練習ではプレーの当事者だけでなく、他の選手がプレーを見て理解を深めることも重要ではあるが、そういった目的ではない練習の時にも無駄が多いように見えてしまう。

どっちつかずのメニュー

 まず、そもそもの話に戻るが、キャンプの目的を各球団どのように置いているのだろうか。選手個人の能力を高めることであれば、もっと体力面やスキル面の課題について個別に可視化を行い、それに合った個別メニューを組むべきではないだろうか。そういったことは個人に任せて、とにかくチームプレーの強化を目的にするのであれば、実戦のプレーに即した練習をもっと行うべきだ。

 現在のキャンプを見ていると、それぞれどっちつかずと言えるようなものが少なからずあるように見える。選手にメニューの目的を理解しているか聞いても、はっきりと答えられないということがある。なんとなく慣習だから毎年同じようにこなすことが多くはないだろうか。

 例えば、走り込むこと、投げ込むことで体が出来上がってくるというのであれば、「何を持ってOK」とするかという基準も明確にすべきである。選手の感覚によるところが大きい部分ではあるが、これだけ技術が進んできたのであれば、それを明らかにする試みがもっとあってもいい。

 とはいえ、新たな取り組みが見られないわけではない。巨人ではトレーニング指導にボディビル元世界王者の鈴木雅氏を招聘し、若手の体作りへのテコ入れを図っている。競技は異なるが、必要な筋肉をどう鍛えるかという点ではスペシャリストであり、ソフトバンクが以前からこのような専門家を招聘して選手のフィジカル強化に成功していることを考えると、面白い取り組みといえる。

 また、DeNAでは、選手の動作解析を担当する「バイオメカニクスアナリスト」を採用し、選手の動きについて様々なアプローチを行っている。これも以前にはなかった取り組みだ。

 今まで培われてきた経験が無意味で、何もかもが効率化されれば良いと言うものではもちろんないが、これだけテクノロジーが進化しているにもかかわらず、プロ野球のキャンプで行われている練習を見ると全体的に古めかしさを感じることは事実である。

 トッププロであるNPB各球団には試合の現場だけではなく、キャンプや練習においても最先端のものをどんどん取り入れて、野球界全体のレベルアップを推進する役割を担ってもらいたい。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮取材班編集