83歳「森喜朗」元首相、なぜ要職に留まっていられるのか? 問題発言と謝罪の歴史を辿る

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「大事な時には…」から「女性の話は」

(3)「大事な時には必ず転ぶ」発言

 2014年、講演会におけるこんな発言が問題化する。

「頑張ってくれと見ていましたけど(浅田)真央ちゃん、(ショートプログラムで)見事にひっくり返りました。あの子、大事なときには必ず転ぶんですね」

 テレビを前にした老人の感想ならば問題ないのだが、この時点ですでに彼の肩書は2020年東京オリンピック・パラリンピック組織委員会会長。それだけに「無神経だ」といった批判が沸き起こったのだ。

 もちろんこれも「真意が伝わっていない」というのが森氏の考え。本来は、女子フィギュアの戦略のミスを指摘したかったのだという。

 ただしこの時はテレビ番組に出演して、

「自分の気持ち、真意を伝えるのって難しい。マスコミに自分の言いたいことが必ずしも伝わっていなかった。(そこは)自分も反省しなければならない」

 とも語っている。

 ここでついに「謝罪」に加えて「反省」を手に入れたのかもしれない。

 そして今回問題になっているのが……。

(4)「女性の話は長い」発言

 JOCの評議委員会で「女性がたくさん入っている理事会の会議は時間がかかる」と発言(2月3日)。

 これも本人としては「誤解」が多々あるということだろうが、これまでとの違いは翌々日には「謝罪」のみならず「撤回」までしている点だろう。

 森さんはついに「撤回」を手に入れた!

 もっとも、同時期の「見物客が集まるからタレント聖火ランナーは田んぼを走ってほしい」という主旨のかつての「寝ててくれれば」発言を連想させる問題コメントはまだ撤回していない模様。

なぜ要職に?

 一連の流れを振り返ると「神の国」の時からは21年かけて少しずつ進歩したと見ることもできなくはないが、もちろん普通の政治家や大人はそもそもこんなに何度も同じような過ちを繰り返さない。例外は森氏の後輩の財務大臣くらいだろうか。

 それにしても一般国民に理解できないのは、なぜこういう発言を繰り返す森氏が、さまざまな要職にいまなおついているかだ。

 森氏自身、今回の騒動後に毎日新聞のインタビューに答え、「武藤敏郎事務総長らの説得を受け、職に留まった」ことを明かしている。

 政治部記者は言う。

「森さんは以前から自派閥のみならず政治家の面倒見がよく、安倍さん(晋三前首相)は森さんのことを『政治の師』と呼ぶほど。政治家を引退した後も、自身の政治資金パーティーを開き億単位の集金能力を誇っていました。それを原資に若手議員を中心に物心両面でサポートしていたことがあるので、森さんのことを悪く言う人はなかなか出てこないでしょう。相通じると言ってはお互いに失礼ですが、麻生さんに近いかもしれません。麻生さんは『半径2メートルの男』と言われています。つまり、遠くからだとイマイチだが、深く付き合うととても良い人という意味で、確かに楽しい。森さんも気さくなタイプで、気の置けない人たちと話している感覚でポロッと失言が出てしまうんでしょう。オプジーボが効いて肺がんを克服した後、今は人工透析を続けている身ですが、会見はずっと立って対応していましたよね。元首相のプライドを見た感じがしています」

デイリー新潮取材班

2021年2月8日掲載

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