離婚騒ぎも追い風に!? 独立後も変わらぬ「暴君」っぷりに見る前田敦子のスター性

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 元AKB48の前田敦子さん・勝地涼さん夫妻が離婚協議中だという。正式なコメントは双方ともに出していないが、昨年より別居が報じられていた。前田さんのマザコンぶりだとか、彼女の気の強さに手を焼いて、など、どうにもあっちゃん側に非があるような記事が目につく。勝地さんに怒鳴っている写真のほか、映画等の撮影現場でも態度が悪かったなど、さまざまなあっちゃんの「暴君」エピソードがあふれている。

 しかし、彼女は本当に気が強いのか。むしろ、気は弱いのだと思う。だいたい他人に怒り散らす人や感情のアップダウンが激しい人は、自分に自信がない人である。あっちゃんもきっと、自分のコントロールできる領域が少ないと不安になり、かんしゃくを起こすタイプなのだろう。

 そして幸か不幸か、その不安定な性格こそが彼女をスターに押し上げたのではないか。AKB48が全盛の頃、あっちゃんのセンターは安定感があった。画面としてしっくりくる感じ。それは彼女が不安定だったからだ。幼さの象徴たるアイドルとして、あらゆる未成熟な精神性を体現していた。笑っていても自信のなさが見え隠れする瞳、震えるような地声、過呼吸で倒れこむ舞台裏。嗚咽しながら「私のことは嫌いでもAKBのことは嫌いにならないで」と語る名スピーチ。初めてセンターに抜擢された時も、目立ちたくないと泣き喚いたという。

 アイドルになっておいて目立ちたくないってなんだよ、と誰もがツッコむだろう。でも「誰もが一言言いたくなる感じ」があっちゃんの魅力の正体だと思う。目が離せないアンバランスさに、秋元康さんが価値を見出した。気づけばタモリさんや大泉洋さんなど、ひとクセある芸能人たちも彼女を可愛がっている。炎上を恐れてあらゆるタレントが小利口に器用になっていく中で、何をしでかすかわからないあっちゃんは面白いのだろう。 

 今回の離婚騒動も、ほとんどが「前田敦子」を前面に出した報道である。自信がないのに目立ちたがる、自称タレントはたくさんいる。けれども、自信がないのに目立ってしまう人は本物のタレントだ。やたらとあっちゃんの気の強さに焦点を当てた記事も多いが、改めて彼女のタレント性を浮き彫りにしたのではないだろうか。

良き妻とスターは両立しないというジレンマ 一番理解していたのは夫?

 昨年末に太田プロから独立し、フリーとなったあっちゃん。普通のタレントなら、独立直後に離婚協議はしないだろう。イメージダウンにつながるからだ。思えばAKB卒業直後にも、泥酔して佐藤健に抱きかかえられる写真がすっぱ抜かれていた。人生の節目に、男がらみで一悶着ある元アイドル。不安定なことこの上ない。だからやっぱり、みんな目が離せないのだろう。昔の広末涼子さんともちょっと重なる。

 ここから先は全くの想像だが、あっちゃんの不安定さがスター性の源泉だと、一番わかっていたのは夫の勝地さんではないか。あっちゃんはかつて「ホンマでっか!?TV」に出演した際に、「すぐパニックになる性格」「私の子どもが私のようにいつか爆発する子にならないか心配」と語っていた。その時披露したエピソードに、探し物が見つからないと不安になり、夜中でも夫を起こして一緒に探させるというのがあった。それでも勝地さんは根気強く付き合ってくれるのだそうだ。しかも「(パニックにならなくても)大丈夫だよ。落ち着いてね」と、問題が解決した後に声をかけてくれるという完璧なフォロー付きで。

 母親とのベッタリぶりも離婚原因ではとささやかれているが、お母さんとの近距離育児も勝地さんからの提案だったという。夫に肩身の狭い思いをさせるのでは、とあっちゃんは遠慮したそうだが、それでも背中を押してくれたので感謝していると育児雑誌で語っていた。実にいい夫婦である。

 本人たちの発言を見る限り、あっちゃんの激しい性格を勝地さんはよく理解していた。しかも、どんなシチュエーションで爆発しやすいかも気づいていたはずである。一方で、その不安定さがスター性と地続きであることも、同業者として痛いほどわかっていたのではないか。爆発を防ぐのではなく、させてから受け止めることで、あっちゃんはタレントとして輝き続けられた。けれどもそれは、受け止める側の負担が相当に大きい。そしてあっちゃん自身も、良き妻と人気タレントであることは両立しないというジレンマに向き合い続けてきたのではないだろうか。

 離婚協議の原因が何かもまだ明かされていない。勝手に想像するのも野暮だ。言えることがあるとするならば、あっちゃんは不安定でいる限り、今後も業界の「センター」を歩むだろうということ。何よりご夫婦それぞれにとって、良い道を進まれるといいなということだけである。

冨士海ネコ

2021年2月3日掲載

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