コロナの恐怖を煽るテレビ番組制作者のホンネ 「羽鳥モーニングショーは良く練られた番組」

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玉川発言めぐるバランスが絶妙のモーニングショー

 さて、新型コロナに関する煽り立て報道で視聴率を稼いでいる番組として有名なのは、テレビ朝日の「羽鳥慎一モーニングショー」をおいて他にあるまい。視聴者が「一体何様のつもりだ」と呆れるような傲岸不遜発言を繰り返す局員コメンテーターの玉川徹(テレ朝社内では若い頃から「京大卒3大変人」と眉を顰められる存在だったそうだ)や、「東京も2週間後には今のニューヨークになる」などと非科学的な発言で視聴者の恐怖心を煽った白鴎大教授の岡田晴恵は、高齢者中心の同番組の視聴者を“新型コロナ恐怖シンドローム”に陥れた一大戦犯だ。だが、テレ朝元幹部は「玉川や岡田の極端な煽り発言は、ネット上に意図的に起こした批判を利用して視聴率を稼ぐ、典型的な炎上商法」と認めながらも、「実はとてもよく練られた番組構成になっている」と称賛するのだ。

「的外れな発言を繰り返す岡田を出演させ続けたため、視聴者センターに抗議が殺到し、今は彼女の出演回数を減らしているようです。その分、玉川一人が新型コロナウイルスの危険性を激しい口調で主張する一方、石原良純、長嶋一茂、山口真由ら他の出演者が反対意見をぶつけることで、番組としてのバランスを取っている。不安を煽っているとしか感じられない玉川の発言も、彼自身がその理由を番組内で断った上で発言しているので、新型コロナに対する恐怖心をどんなに煽り立てたところで、視聴者には玉川の発言がもっともらしく感じられるようにできているのです」

 確かに玉川氏は昨年12月14日、番組内でこんな言い訳めいた発言をしている。

「僕、やっぱり感染症に関してはある種、煽ってるって言われるくらいでいいんじゃないかって、ずっと思ってやってきたんですよ。結果としてアイツは煽るばっかりで、そんなに大したことは起きなかったなっていうんだったら、それの方がいいって思ってる。あの時に『もっと強い手を打っておけばよかった』って思うよりは、ちょっと強めすぎたかもしれないけど、感染者も死者も少なくてよかったねという方がいい。僕の老婆心ですけど」

 まさに「誰がお前にそんなこと頼んだ?」と突っ込みたくなる手前勝手な発言だが、前出のテレ朝元幹部はこう解説する。

「番組前半に玉川と他のコメンテーターとのシビアな論戦が展開されたあと、後半のお天気コーナーで気象予報士の男性が『お天気の時間です、体操でリラックスしましょう』などと出演者を誘うのです。予報士から『玉川さん、体操してますか? はい、腕を伸ばして!』などとイジられた玉川が、先程とは打って変わったにこやかな表情で体操しているので、スタジオ内はアットホームな空気に包まれている。これを見た視聴者は『あんなに真剣に危機感を訴えていた人が、お天気コーナーではみんなと一緒に体操している』とホッコリしてしまい、ますます玉川の発言を注目するようになる。やり口としてはあざといけれど、シナリオのしっかりしたエンターテインメント番組と捉えれば納得できます」

 新型コロナ禍さえエンターテインメントにしてしまう。これこそワイドショーの元祖、テレ朝の真骨頂なのだろう。ちなみにテレ朝内では、報道番組よりワイドショーの方が格上扱いされているそうだ。

まともな新型コロナ報道は民放には無理

 ところで墓穴を掘り続けている菅総理は1月9日、首相公邸ですしチェーン「すしざんまい」運営会社社長の木村清と面談し、2度目の緊急事態宣言による飲食店や関連業者への影響を聞き取った。木村はこの時、菅に「飲食店だけでなく、飲食店にいろいろな品物を卸している業者も困っている。そこに対する手当が必要」などと進言。その数日後、政府は飲食店の取引先を支援するため、中小企業に最大40万円、個人事業主に最大20万円を3月以降に給付する方向で検討していることを明らかにした。首相官邸を訪ねた木村がぶら下がり取材に応じる映像が撮影できたことで、これまで民放が全く着目しなかった、新型コロナ対策が日本経済に与える深刻なダメージの一面にようやくスポットライトが当たることになった。ある民放の報道幹部が嘆く。

「これはGoToトラベルにもそのまま当て嵌まる問題です。GoToトラベルは旅館だけでなく、お土産屋や、旅館と取引する卸売業者などにも好影響を与え、復活に向けて立ち上がる人たちを支えた。追加分を合わせると3兆円を優に上回る国家予算が投じられるGoToトラベルには、実は何倍もの経済波及効果があることは明らかなのに、新型コロナに対する不安を煽り立てて視聴率を稼ぐことしか念頭にないテレビメディアは、『GoToトラベルのおかげで助かっている』という事業者の声を殆ど無視。逆に8282万人(昨年12月15日時点)のGoToトラベル利用者のうち、感染者はわずか309人(同年12月17日時点)に過ぎないにもかかわらず、その事実を糊塗して、GoToトラベル継続を政争の具に利用しようと企んだ野党に便乗して菅政権を叩き、ついにGoToトラベルを中止に追い込んでしまいました」

 この幹部自身、何度もGoToトラベルで潤っている人たちの取材を部下に働き掛けたものの、誰一人それに応じようとはしなかったという。

「民放には、視聴率が見込めない重いネタや難しいネタを手掛けようとする記者やディレクターが殆どおらず、取材する発想すらありません。さらに今回のコロナ騒ぎを受けて取材に出向く機会が激減し、重い腰がさらに重くなった。そもそも民放の記者は新聞やNHKなどに比べて絶対数が少ない上に、出先の記者クラブで数多くの発表モノを日々こなさなければならず、これを記事にしているだけでニュース番組の枠が埋まってしまいます。問題意識を持ち、それを解き明かそうと取材を続ける記者がいないので、結局は今回の新型コロナ騒ぎの報道のようにセンセーショナルに煽り立てたり、新聞やネットメディアを丸写ししたりするしか選択肢がないのです」

デイリー新潮取材班

2021年2月3日掲載

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