大相撲で「物言い」増加の背景 コロナ対策で稽古不足か

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 緊急事態宣言下で行われた大相撲初場所は、平幕大栄翔の優勝で幕を閉じた。

 そんな中で物議を醸したのが、11日目に行われた大関正代と平幕隠岐の海との取組だ。正代の体が土俵外に放り出されたように見え、行司も隠岐の海に軍配を上げるも、物言いがつき、両者の「同体」と判断された。取り直しの一番では、隠岐の海が正代を圧倒し、寄り倒したように見えた。行司は再び隠岐の海に軍配を上げたが、またも物言い。今度は、隠岐の海の「勇み足」が指摘され、軍配差し違えで正代の勝ちとなった。そしてこの取組後、行司を務めた式守伊之助が進退伺を申し出たというのである。

 しかし、ファンからは、「最初の一番の正代は死に体だ」「いや、取り直しの一番だっておかしい」「行司は間違っていない」と擁護の声が寄せられた。

 玄人衆も、たとえば北の富士が中日スポーツ紙上で、

〈初めの一番はどうも納得がいかない。体が宙に浮き、すでに上体が上を向いている。そのとき隠岐の海の足は出てはいるが、蛇の目は踏んではいないように見えたのだが。〉

 と疑問を呈した。中継で解説をしていた舞の海も腑に落ちない様子だった。

 ともあれ結果として正代は、大栄翔と並び2敗で優勝争いトップを維持。そのため、「正代の2敗を守って、優勝争いを盛り上げるための“忖度”では?」、ひいては「2横綱が休場ばかりで不甲斐ないものだから、早く正代を横綱にしたいのでは?」という、うがった見方も噴出したのだった。

「場所を盛り上げるために審判部が忖度する、ということはありえませんがね」

 と相撲記者が語る。

「戦前は、たとえば双葉山が強すぎてつまらないから……なんてことがあったそうです。今はそこまで圧倒的な力士もいませんから」

 それにしても、この場所はきわどい勝負が多かった。とりわけ正代は、10日目、13日目の取組でも物言いがついている。

 なぜこんなことになったのか。

「行司の眼力が衰えたということもありますが、コロナも影響しているかも」

 と先の記者が続ける。

「感染対策のために部屋を行き来する出稽古が禁じられたせいで、稽古不足の力士が多く見られました。なかでも部屋に幕内が1人しかいない大関朝乃山や、2人しかいない正代は顕著。それぞれ11勝挙げたものの、内容は悪かった」

 ここにもコロナの影が。

週刊新潮 2021年2月4日号掲載

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