コロナで増える外食「監修」のコンビニ食 元祖は26年前、あの料理人とのコラボ弁当

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 最近、コンビニの店頭で「〇〇監修」といった、有名外食店の名を冠するメニューをよく見かけないだろうか。昨秋にはローソンが全国の外食企業との大々的なコラボを発表してもいる。こうした動きの背景には、コロナ禍による外食産業の不振も関係しているという。

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 幸楽苑が監修した「中華そば味」のからあげクンに、塚田農場が監修した「チキン南蛮弁当」、北海道の有名珈琲店・森彦が監修した「コーヒーロール」……昨年10月にローソンが発表した「コラボ相手」は、じつに35社に及んだ。同社の竹増貞伸社長は会見で、

「外食が元気で町も元気でないと、実は我々の商売もうまくいかない。外食は時にはライバルだが、切磋琢磨して町を盛り上げ、お客様の笑顔を増やし、共存共栄していく町の仲間」

 と、その目的を語っている。今年に入ってからもローソンからは、有名ラーメン店「つじ田」監修によるチルドの坦々麺や、エースコックの同店限定カップ担々麺が発売されている。

 監修商品を出すのはローソンだけではない。セブン-イレブンは銀座デリーが監修した「カレーおむすび」を昨年末に発売したほか、以前から一風堂、とみ田など有名ラーメン店が監修した商品を展開中だ。今冬ファミリーマートからは、麺屋はなびが監修した「台湾まぜそば味の肉まん」やCoCo壱番屋監修の「激辛!チーズカレーまん5倍」が発売されている。

「こうした監修商品は以前からありましたが、竹増社長の発言にもあったように、コロナで外食産業が苦しい現在、積極的に行われている印象を受けます。監修によってお店側にロイヤリティ料が入るのは、大助かりなのではないでしょうか。これだけコンビニでの監修商品が増えてくると、お店としても“失敗”のリスクもないでしょう」

 と解説してくれるのは、流通アナリストの渡辺広明氏だ。渡辺氏は昨年、セブン-イレブンから発売されていた一風堂の「カップ麺」「チルド麺」「冷凍食品」、実店舗で提供されているラーメンの食べ比べをしたという。

「お店で食べるラーメンとコンビニの商品では、味に差はあります。とはいえ、カップ麺は日清が作っていましたから、麺はさすがの美味しさでした。監修のコンビニ商品はお店より安いので、食べに行く手間や価格で、差別化をきちんと図れています」

「コンビニ監修」の原点は…

 こうした「監修コンビニ食」は、いつから始まったのだろうか。過去の報道を遡ると、

〈ブランド力でコンビニの味を変えたのは、サンクスアンドアソシエイツ(本社・東京)が一九九五年秋に売り出した「神田川俊郎弁当」が最初、とされる〉

 という記事を発見した(1998年9月15日付の朝日新聞名古屋版)。この記事では他にも、陳健一氏が監修する中華総菜をサンクスが販売していることも紹介している。

 気になるその中身は、

〈舞茸御飯、蓮はさみ揚げ、いか松毬焼き、茄子の白味噌和え、カレー風味の鶏唐揚げ、赤魚の焼き魚、焼肉など素材と調味に手間と時間をかけた彩り豊かな弁当。ソースや醤油不要のしっかりした味付けで、「竹の八寸利休箸」を添付、重箱風に仕上げた容器など隅々までこだわって仕上げた〉(「食糧新聞」95年9月22日付記事)

 というものだった。

「『神田川俊郎弁当』、たしかにありましたね。監修コンビニ食のさきがけがサンクスだったというのは、興味深いところです。というのも、当時はまだ、大手コンビニ各社は自前で美味しい弁当を作ろうという考えが根強かった。いわば猫の手を借りるような、“監修”の実現はできなかったはずです。その点、当時業界4~5番手だったサンクスが始めたというのは、納得させられるものがありますね」

 監修を受け入れた神田川俊郎氏もまた、慧眼だったといえるだろうか。

「今でこそローソンでGODIVA監修のチョコレートなどが売られているのは当たり前ですが、ひと昔前に同じことをしたら、テナントにGODIVAを入れている百貨店は怒ったと思いますよ。『コンビニなんかで売ったら、それを扱っている自分のところのイメージも悪くなるだろ』と。それくらい、コンビニの地位は低かった。そうした時代にコンビニの監修を引き受けた神田川さんは、なかなかのものです。もっとも『神田川俊郎弁当』は、値段がけっこう高かったはず(※記事によると880円)。プレミアムの付加価値があるため、神田川さんのブランド力を損ねることもなかったのでしょう」

 もっとも、本格的に監修系のコンビニ食をメジャーにしたのは、2000年4月にセブンが発売した「すみれ」と「一風堂」のラーメンのヒットだと渡辺氏は指摘する。追い風になったのは、ご当地ラーメンの人気だ。

「1994年にオープンした『新横浜ラーメン博物館』の影響は大きかったと思います。ひとつの場所で全国の有名店のラーメンが楽しめる場が生まれたことで、局地的な人気だったラーメン店が、全国区の知名度を獲得するようになったわけです。セブンが監修のコンビニ食を作ったのは、こうした背景があったためでしょう。またコンビニ食になることで『実際の店も食べてみよう』と、お店はより広く人気を得るようになりました。そう考えると、08年から始まった『一風堂』の海外進出の立役者は、セブンの監修ラーメンかもしれません。日本国内で盤石な人気を得ていたからこそ、海の向こうへ挑戦できたのかも……」

 コロナが収束し気兼ねなく外食できるようになるその日まで、しばし「監修コンビニ食」のお世話になろう。

週刊新潮WEB取材班

2021年1月22日掲載

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