「文在寅」の失策が生んだ「結婚を諦める若者たち」と「九放世代」という言葉

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「愛の不時着」と「日本人の芸能人」

 新年早々、大ヒットドラマ「愛の不時着」主演カップルの誕生という明るいニュースが流れた。結婚間近という噂も飛び交っている。一方で、韓国のバラエティ番組で活躍中である日本人の芸能人・藤田小百合が昨年11月、精子バンクから精子の提供を受けて男児を出産したと明らかにした。藤田は、「嫌がる男性に妊娠を迫るのは性暴力」という母の言葉と、「愛していない人と結婚するのは嫌だ」という気持ちから、「一人で子供を産むことにした」と言う。「愛の不時着」の件も藤田のことも話題になっているが、藤田に象徴される「非婚ママ」は、若い世代で増えることはあっても減ることはない。その背景にあるのは文在寅大統領の失策だとされ、さらに悪いことに「九放世代」という言葉まで飛び出している。ソウル在住ライターによるレポート。

 社会変化を反映して、非婚、事実婚、婚前契約結婚、卒婚など、結婚に関するさまざまな形式は韓国でも話題になってきた。

 2011年頃、恋愛と結婚、出産を放棄する「三放世代」という言葉が誕生した。

 また、恋愛、結婚、出産に加えて就職やマイホームも放棄する「五放世代」、さらには人間関係や夢まで諦める「七放世代」も登場した。

 2020年の統計庁の社会調査によると、13歳以上の国民の10人に6人は結婚しなくても同居で良いと考え、藤田小百合のように10人中3人は結婚せずに子供を持ちたいと考えている。

 20代~30代の未婚男女の4人に1人は「非婚」を考える。

 男性は「経済的負担のため」、女性は「結婚による関係変化の負担のため」が一番多い理由で、つまるところ両者とも負担増が結婚を躊躇わせている理由のようだ。

 文在寅大統領は選挙戦で、“フェミニスト大統領になる”と宣言した。

結婚件数は史上最低

 育児休職制度と公立保育所の拡大を掲げ、女性の復職・雇用拡大・管理職の増大などに言及。

 また、性暴力対策として2019年には「女性暴力防止基本法」が国会を通過したが、世代間の差異が表面化した。
 
 男性優位の時代を生きた50代と男女平等の時代を生きる20代は、性差別に関する意識が異なっている。

 たとえば、2019年1月に起こった西江大学でのセクハラ事案について。
 
 当初、男性教授から女子学生への「かわいいね」発言がセクハラにあたるか否かという議論だったものが、セクハラやストーカー行為の基準は何なのか、そして、女子学生側の過剰な反応は逆差別ではないかという意見も出てくるようになった。

 女性の進学率の上昇やOECD最高水準の36.7%の性別賃金格差をOECD平均水準の15.3%まで下げる男女賃金格差是正策、女性の雇用拡大など、20代から30代前半の男性は、文大統領が唱えるジェンダー政策は、女性優位の逆差別だと考え始めていたのだ。

 ジェンダー問題が深刻化していくなか、雇用問題も相まって恋愛や結婚など考えられるわけがない。

 ちょうど就職氷河期に放り込まれ、正規雇用から弾かれた20代男性のアルバイトは、肉体労働が多い。折から採用された最低賃金引き上げ政策は雇い止めを生み、コロナ禍が追い打ちをかけた。

 一方、女性は雇用枠の拡大で就職を決めていく。

 文大統領の「ジェンダー問題を特別なことだとは思っていない。格差是正の中で社会が成熟していくための段階だと考えている」という発言が、20代男性の希望をさらに失わせ、「七放」どころか「今」や「自分の人生」まで放棄する「九放世代」を生み出した。

 韓国の結婚件数は、2019年に史上最低の約24万件を記録した。

 そして、文政権が不動産の銀行融資を制限する政策を打ち出すと、婚姻届を出さない方が有益だという声まで出てきた。

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