「パラサイト 半地下の家族」が今夜「金ロー」で放送…そんなに良い作品か?

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「パラサイト」で描かれる図式

 南北分断とアメリカという「グエムル」で採られた図式は、「パラサイト」でも(無理矢理に思える形で)くり返される。

 半地下家族の悪巧みで家政婦の職を奪われた、ムングァン。豪邸の「地下」に隠れ住んでいたのは、彼女の夫・グンセだった。地下室は北朝鮮からミサイルが発射された時のためのシェルターだった。高台でも半地下でもなく、地下。「また別の低さ」に住んでいる男、というわけである。さて、彼はどう“機能”するのか。

 邸宅の広々とした庭で開かれる、金持ち一家の誕生日パーティーのシーン。アメリカに憧れを抱く金持ち父からのプレゼントは、米国製の本格仕様のテントである。さらに金持ち父は、贈り物に相応しいサプライズ演出を、半地下家族の父にお願いしていた。インディアンの扮装で、タイミングを見計らってテントに“襲撃”をかけることを。

 つまりここでは、テントで野営する成金一家=アメリカ化する韓国と、インディアンの格好をさせられる半地下家族=最底辺の韓国という、国内での経済格差という「分断線」が引かれている。

 そうしてお膳立てをしたところで、半地下家族よりさらに下、地下に潜入していた家政婦ムングァンの夫・グンセが、北からのミサイル攻撃のような、南北朝鮮の「分断線」を超えたテロ行為を敢行する。

 アメリカを夢見る高台一家/貧困の底が抜けた半地下一家/飢餓化するテロ国家の代理としての地下夫婦という図式が、レイヤーとして示されるまで、大体2時間……。

 道半ばで挫折した方はNetflix配信中の「空の大怪獸 ラドン」あるいは「ゴジラ対ヘドラ」を見て、リフレッシュして欲しい。

椋圭介(むく・けいすけ)
映画評論家。「恋愛禁止」そんな厳格なルールだった大学の映研時代は、ただ映画を撮って見るだけ。いわゆる華やかな青春とは無縁の生活を過ごす。大学卒業後、またまた道を踏み外して映画専門学校に進学。その後いまに至るまで、映画界隈で迷走している。

週刊新潮WEB取材班編集

2021年1月8日掲載

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