「パラサイト 半地下の家族」が今夜「金ロー」で放送…そんなに良い作品か?

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観るならNetflix

 カンヌ映画祭パルム・ドール(最高賞)! アカデミー賞作品賞、監督賞、脚本賞、国際長編映画賞受賞。 興行収入は全世界合計で2億5351万523ドル(約265億9000万円)。 日本国内で47億円超 (韓国映画で歴代最高)を記録……大絶賛された韓国映画「パラサイト 半地下の家族」が、1月1日にNetflixで配信 された(モノクロ・バージョン)のに続き、1月8日には「金曜ロードSHOW!」(日本テレビ系)で地上波初放送される。

 物見遊山気分で覗いてみたくなるのが、人情というものだろう。どちらで見るか――迷っているあなたがNetflixに加入しているのなら、そちらでの“試し見”をおススメしたい。オンエア視聴ではきっとあなたは、途中でくじけてしまうだろう。でもそんな時Netflixなら“一時停止”すればいい。思い出したらまた、“再生”できる。なにせ、この作品は、2時間12分 という実際の上映時間以上に、長さを感じさせるのだ。
(本稿にはネタバレがあるので、映画に“期待”している方は読まないほうがいい)

「パラサイト 半地下の家族」の主人公、ソン・ガンホ演じるキム・ギテク とその一家は、窓から道行く人々の足元が見えるような「半地下」に暮らしている。実際ソウルには、低所得層向けたそんな賃貸住宅があるらしい。他方、ITビジネスでぼろ儲けしたパク社長 は、「高台の豪邸」に住んでいる。かくして貧乏なキム一家による成金パク社長邸宅の、パラサイト(乗っ取り)計画がスタートする。

 半地下家族の父が超富豪の運転手に、母が家政婦に、息子と娘が家庭教師としてまんまと「成金御殿」に潜り込む。有名大学の入学証書偽造や似非心理学用語、下半身スキャンダル捏造に感染症疑惑と、パラサイトするための手口はどれも下衆(ゲス)い。漫画ですら通用しないような罠にいちいちはまってゆく(成金一家のそんな間抜けっぷりを見て失笑するのが、正しい鑑賞法なのだろうか)。

 とにかくパラサイトは成功し、半地下と高台の高低差は逆転したかに見えた。先の見えていた退屈な展開に、この時点で視聴時間は体感で2時間超え。やっと終わりか……と思っていたら、ここであまり嬉しくないサプライズ。乗っ取った豪邸に隠し階段があって「半地下」じゃなくて「本地下」に潜んでいた男があらわれる……。まだ続くのか、と思うこと必至である。

“社会派”監督ポン・ジュノ

 私が「パラサイト」を評価しないのは、展開そして映画の長さが、ポン・ジュノ監督が“社会派”を描きたいがための方便のように思えるからだ。

 それは2006年の監督作「グエムル 漢江の怪物」でもそうだった。エイリアンとプレデターをかけ合わせたような怪物が、漢江(ハンガン)の河川敷を快走し、橋からぶら下がっている――同作の予告編を見たとき、わが少年心は色めきたったのを覚えている。しかも、主演はソン・ガンホ 。2003年の「殺人の追憶」(こちらもポン・ジュノ監督 で、これは良かった)で昔堅気の刑事を演じた彼が、今度はモンスターと対決する。単純明快・痛快無比なエンターテインメントへの期待が高まった。だが……。

 グエムルという怪物は、在韓米軍が大量投棄した化学物質のせいで生まれたらしい。怪物との決戦の場になる漢江は、1960年代以降の韓国の高度経済成長の象徴と言われている。 一方でこの川が北朝鮮側を流れている臨津江(イムジンガン)と漢江が合流する辺りに、南北の軍事境界線が引かれている。つまり、グエムルが漢江に現れて大混乱を巻き起こすこの映画は、韓国とアメリカの同盟関係、南北の緊張を描こうとしていたのだ。しかしそのことで怪獣映画の爽快感は大いに損なわれ、程度の低い社会派作にまで後退してしまった。

 ティム・バートンやギレルモ・デル・トロといった異才・鬼才も熱愛する、わが国の東宝特撮怪獣映画 では、公害や核実験といった社会問題は、怪獣・怪人を大暴れさせるための口実に過ぎなかった。

「ゴジラ対ヘドラ」(1971、坂野義光監督) の怪獣は工場排水による海の汚染で生まれ、成長してオタマジャクシ様になり陸に上がって二足歩行し、遂には巨大エイのような姿で飛行するまで変体してゆく。南太平洋の水爆実験で被爆した人間が変異した「マタンゴ」(1963、本多猪四郎監督) のキノコの化け物はエキゾチックな、毒々しい極彩色をしていた。

「空の大怪獸 ラドン」(1956、本多猪四郎監督) では、核実験などの影響でよって現代に復活した巨大翼竜ラドンが、小学校の上空を超音速で通過する。その超音速飛行の衝撃波(ソニックブーム)によって、校庭にいた子どもたちが皆、なぎ倒されてしまう。凄まじい破壊力。惨劇を目の当たりにして、視聴者はますます手に汗握る。社会問題に対する意識の高さなどではない。これらの特撮映画はただ単純にメチャクチャ面白くて、だからいまでも世界を魅了しているのだ。メッセージばかりが強い「グエムル」に、その爽快感は無い。

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