スペシャルアシスタント「藤川球児」が期待する“阪神の黄金時代”は到来するか

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 2020年も多くの選手がユニフォームを脱いだが、中でも一番の大物選手と言えば藤川球児(元阪神)になるだろう。日米通算245セーブ、164ホールドを誇り、全盛期の“火の玉ストレート”は分かっていても打てないボールだった。引退後は球団の「スペシャルアシスタント」に就任する予定だが、先日、母校の高知商を訪問した時に今後の阪神について聞かれた際には「5年、10年先が見えるいい状態」で、「永続的に強くなる編成に進んでいる」と、チームの将来に期待を寄せるコメントも残している。果たして、そんなレジェンドが期待する阪神の黄金時代は到来するのか。現在のチーム状況から強みと課題を探ってみたい。

 2020年のチーム成績を見てみると、チーム防御率は巨人に次ぐリーグ2位ながら、チーム打率はリーグ5位、得点数はリーグ4位と、ここ数年続いている投高打低の状況は大きく変わらなかった。

 やはり、気になるのが外国人選手への依存度が高い打線だが、そんな中でもリードオフマンの近本光司、主砲の大山悠輔と柱となる日本人選手がしっかりしてきたことは、大きなプラス要因だ。

 近本は、開幕当初こそ苦しんだものの、徐々に調子を上げて昨年を上回る打率をマークするなど、2年目のジンクスを感じさせない活躍を見せた。ルーキーイヤーからの2年連続30盗塁以上は、セ・リーグでは67年ぶり二人目の快挙だ。また、大山は開幕時点でベンチスタートだったが、夏場以降は安定した成績を残し、打率、本塁打、打点の全てでキャリアハイを達成した。長打率は、村上宗隆(ヤクルト)に次ぐリーグ2位と、まさに主砲らしい活躍だった。

 一方の投手陣は、西勇輝、青柳晃洋、秋山拓巳と安定した先発が揃い、リリーフ陣も藤川が離脱しても岩崎優、スアレスと勝ちパターンがしっかり確立されたことが強みである。本来であれば、藤浪晋太郎が大エースとなっていることが望ましい状況だが、彼を計算しなくても戦える戦力は十分に揃っているといえる。

 2021年のシーズンを考えると、戦い方は大きく変わることはなさそうだ。野手ではボーアが退団し、新たに韓国でホームランと打点の二冠に輝いたロハスが加入する。ただ、2018年にも大きな期待を受けて入団したロサリオがわずか8本塁打、40打点に終わっているように、KBO(韓国プロ野球)での実績をそのまま受け取るのは危険である。ただ、投手については藤川の引退以外は大きなマイナスの見込みはなく、実績十分のチェンがロッテから加入することもあって、さらに層が厚くなることが期待できる。

 さらなる上積みが必要なのが守備陣だ。土のグラウンドである甲子園を本拠地としているのはあるが、チーム失策数は2018年から3年連続12球団ワーストを記録している。この点は改善の必要がある。捕手の梅野隆太郎、センターの近本は安定しているだけに、やはり二遊間を中心とした内野の整備が重要だ。若手の小幡竜平、ルーキーの中野拓夢などの底上げに期待したい。

 そして、将来的なチーム作りを考えた時に大きなポイントとなってくるのが、過去2年間のドラフトで指名した素材型の選手である。投手であれば西純矢、及川雅貴、小川一平、佐藤蓮、野手では井上広大、佐藤輝明といった面々だ。

 チームの命運を握っていると言っても過言ではないのが、やはり井上と佐藤だろう。井上は高校卒1年目ながらウエスタン・リーグで2位タイの9本塁打、3位の36打点と持ち味である長打力を存分に見せ、シーズン終盤には一軍でプロ初安打、初打点をマークしている。二軍でワーストの96三振を喫しているとはいえ、打つ形に悪い癖がなく、四球をしっかり選んで打率に比べて、はるかに高い出塁率を残している点も、いかにも長距離打者らしいところだ。

 その井上を上回る大きな期待を集めているのが2020年のドラフト会議で4球団競合となった佐藤輝明である。日本人離れした体格とパワーで、崩されたようなスイングでもフェンスを超える長打力が最大の持ち味。大型ながら脚力を備えている。ただ、大山の入団時点と比べて変化球の対応力には課題があり、一年目から即戦力と考えるのは危険である。長打力という最大の長所を殺さずに、徐々に確実性を上げていくことが重要だろう。

 投手では西と及川が左右の新たな柱となり、小川と佐藤蓮がセットアッパー、抑えに定着するのが理想である。及川と佐藤蓮は少し時間がかかるタイプだが、小川はある程度一軍で使えるめどが立ち、西も高校卒にしては高い完成度を備えているだけに、2021年中の一軍定着に期待したい。

 投手陣は現在の主力以外にも先発では藤浪、高橋遥人、リリーフでは馬場皐輔、斎藤友貴哉などが控えており、先述した若手が順調に伸びてくれば、今までと変わらず、安定した戦力を維持できる見通しが立っている。そうなると、やはり野手、特に井上と佐藤輝明の抜擢が大きなポイントとなることは間違いない。近本、小幡が1、2番を組み、佐藤輝明、大山、井上がクリーンアップに揃う。そんな打線が実現すれば、阪神の黄金時代もぐっと現実味を帯びてくることになるだろう。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

週刊新潮WEB取材班編集

2021年1月3日掲載