箱根駅伝で大注目 駒沢大エース「田沢廉」の“ごぼう抜き”を見逃すな!

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 いまや、学生長距離界では頭ひとつ抜けた存在だ。駒沢大の田沢廉は2年生ながら、箱根駅伝でも押しも押されもせぬ主役候補。エースが集まる“花の2区”でも区間賞に最も近い日本人ランナーと言ってもいいだろう。

 11月の全日本大学駅伝では、6年ぶりとなる優勝の立役者となった。最終8区で青山学院大の吉田圭太、東海大の名取燎太といった強豪の4年生エースたちを軽々と振り切った強さは目を見張るばかりだった。

「男だろ!」の声がけで知られる硬派な大八木弘明監督が率いる駒沢大の大黒柱である。質実剛健のイメージを抱くかもしれないが、令和のエースは面白いくらいに肩の力が抜けている。オンラインでの優勝会見でも独特の言い回しで、2位の東海大を置き去りにしたラストスパートを振り返っていた。

「走っているときに、何となくここで行こうかな、と思いました。何となくです。計画性はなかったです。自分のなかの感覚ですかね」

 駅伝で相手を抜きにかかるときは、いつも感覚で仕掛けているという。前回大会、箱根の3区で7人を抜き去ったのも記憶に新しい。

「駅伝の醍醐味の一つは、相手を抜くこと」

 柔らかい口調で話すが、言葉には自信がにじむ。箱根に向けても、意気込んでいた。

「バンバン抜いて、流れを持ってきます。個人の目標は区間新の区間賞。留学生にも負けたくないですね」

 そう威勢よく宣言したかと思えば、すぐに頬を緩めて、言葉を付け加える。

「2区は最後のきつい上り坂が待っていますから。1年生のときに比べれば、起伏を走れるようになっていますが、どちらかといえば坂は苦手なので」

 自然体の20歳は虚勢を張ることはない。素直なのだ。希望区間を聞かれても、当初は平坦基調の3区と話していた。それでも、エースとしての矜持は持っている。

「大八木監督に行けと言われれば、どこでも行きますし、行けます」

 区間へのこだわりはない。田沢には田沢なりの考えがある。

「駅伝はチームで勝たないと意味がないので」

 伊勢路(全日本大学駅伝)で優勝の味を噛み締めた2年生エースは、何よりも箱根の勝利を欲している。12月4日、東京五輪の選考会を兼ねた日本選手権の10000メートルで実業団選手たちと争って8位入賞を果たした後も、すぐに気持ちを切り替えていた。日本人学生歴代4位となる27分46秒09の好記録にもさほど気に留めなかった。

「タイムよりも日本のトップランナーと一緒に走ったことがいい経験になりました。レース運びなどを勉強できました。箱根にも生きると思います」

 視野に入れるのは、13年ぶりの総合優勝。2年目の箱根路でも、何食わぬ顔ですいすいと抜いていくつもりだ。正月気分で見ていると、“何となくの感覚”で仕掛けるタイミングを見逃すかもしれない。ぜひ、注意深く見てもらいたい。

杉園昌之(すぎぞの・まさゆき)
サッカー専門誌の編集記者、通信社の運動記者を経て、フリーのスポーツライターに。陸上競技(主に長距離)、サッカー、ボクシングを中心に活動している。

週刊新潮WEB取材班編集

2021年1月1日掲載

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