元特殊部隊員に聞く「すごい身体」になる秘訣 ワニ、アシカの動きから学んだこととは

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ワニ、アシカの動き方を真似る?

伊藤 動物から学んでいますね。動物が先生です。

柳瀬 えっ、動物から泳ぎを学ぶんですか。

伊藤 動物と人間は背骨を中心として骨格が似ていますから、その動きは参考になります。実は、参考にできる体の動きはないかなと、時々水族館に行っては観察しています。彼らは凄いですよ。例えば、アシカは重量がありますが一蹴りで何メートルも移動しますし、カメは手足が短いのに水中で競争しても人間は到底勝てないほどの動きです。

柳瀬 特に参考になる動物がいるんですか。

伊藤 全ての動物が参考になります。例えば、上陸の動作を学びたいときはワニを見ます。水の中の動きだったら、アシカは手の使い方が抜群に上手ですね。そして、全ての動きに共通するポイントが背骨や手をいかに波打たせるかです。いかに鞭のように使えるか。

柳瀬 確かに、オリンピッククラスの水泳選手はそういう動きをしていますね。背骨と体が一体となって、フィンがないのにフィンがあるように泳ぐ。あれは、一流水泳選手だからだと思っていましたが、誰でも会得できるものなのですか? 運動が得意でなくても、後から習得できる可能性はあるんでしょうか。

伊藤 できますよ。もちろん習得のスピードに違いは出るでしょうけれど、基本的には特殊な技能ではありません。理屈を理解して、あとは数をこなしていけば、できないことはないはずです。

柳瀬 そうなると、我々一般人は体の使い方を意識することが重要なわけですね。骨盤の上に頭蓋骨を置く意識で、正しく立って、水族館に行く。

伊藤 動物を先生として、動きを学ぶと。

人間が「永遠」に水中にいられる技術

柳瀬 その次に、いざ体を動かす段階に入った時には、動物に学ぶこと以外に何からすればいいんでしょうか。

伊藤 何をしたいかによりますよね。例えば、泳ぎたい、水の中に長くいたい、となると「泳ぐって何だろう」ということを掘り下げて考えればいいわけです。自分の体を水の中に入れると、どこか体の一部が浮いてきますよね。極論ですが、浮いたのが鼻と口であれば、いくらでも浮いていられる、そこで何をするか。

柳瀬 動物は体の先端に口と鼻があると考えると、実際に口と鼻を浮かせて長い時間泳ぐのは簡単ですね。

伊藤 はい。ただ、人間の鼻と口は頭の上にはないので、体の構造上、難しい。ただ、呼吸ができれば、鼻と口がずっと水上に出ている必要はありません。私の感覚だと、仮に1分間水の中にいるとするとそのうちの10分の1の時間だけ、口と鼻を水面上に出せる技術を持っていれば永遠に水中にいられます。つまり、10秒に1秒間だけ、口と鼻を水面上にどうにかして出す技術をもっていれば、ずうっと水中にいられます。これが「泳げる」ということです。そうなると、クロールを速く泳ぐ、バタフライが泳げるということは重要ではなくなるわけです。

柳瀬 そんなこと考えたこともなかったですね……。
 
伊藤 そのためには、リズムを作らなければいけません。例えば、水にペットボトルを沈めると浮いてきます。あれをイメージして、リズムを作ればいいわけです。沈んでは浮いて、沈んでは浮いて。1秒で吸って、残りの9秒間で水の中で吐き出して、また浮かんでくる。

柳瀬 そのリズムをうまく作ることができれば、力をいれずに水中にいられますね。
  
伊藤 はい。重要なのは目的をはっきりとさせて、合理的に考えることです。そうすると、必要な技術が限定されて、やりたいことをできるようになる可能性が高まります。

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