「菅政権」を直撃! 2つの「政治とカネ」問題が意味すること、再発防止策とは?

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元政策秘書の専門家が分析

 2020年師走の永田町を「政治とカネ」をめぐる二つの不祥事が直撃した。一つは再浮上した「桜を見る会前夜祭」の補填疑惑、もう一つは鶏卵業者による農水大臣への贈賄疑惑だ。かつて国会議員の政策秘書を務めた経験を有し、現在は贈収賄防止などの政治的コンプライアンスを専門とする社会情報大学院大学の北島純特任教授が今回の特捜案件を分析する。

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 新型コロナウイルス感染が拡大する中、Go Toトラベルが中断に追い込まれ支持率が急落した菅政権に、果たして起死回生の秘策はあるのか――。

 2020年12月25日、安倍晋三前首相が衆参両院の議院運営委員会に出席、桜を見る会の前夜に催された懇親会をめぐるこれまでの国会答弁を修正し陳謝した。

 前日には、安倍晋三後援会の代表を務める公設第一秘書が約3022万円分の懇親会収支を政治資金収支報告書に記載しなかったとして略式起訴され、罰金100万円の略式命令を受けたばかり。

 安倍氏本人は嫌疑不十分で不起訴になったが、「道義的責任を痛感している」として謝罪した。

 11月23日の読売新聞が突如1面で報じて再浮上した「桜を見る会」前夜祭の補填疑惑だが、昨年までの5年間の費用計約2300万円のうち800万円以上が安倍総理(当時)のポケットマネー(預金)から補填されていたことが明らかになった。

 これまでの国会答弁が結果として虚偽になったことも含めて、首相再々登板待望論も上がっていた安倍前総理には政治的に痛手となったことは否めない。

 しかし、安倍氏側の法的・政治的責任追及で終わりとするのではなく、日本の政治にとって実効性のある再発防止策を考えなければならないだろう。

4人目の人間

 もしそうした策があるとしたら、一つは、各国会議員に「会計監査や不正防止の専門家」を配置する策ではないか。

 国会議員には国費から給与が支給される公設秘書が三人設置されているほか(政策担当秘書、公設第一秘書、公設第二秘書)、議員本人の歳費や政治資金から給与を支払う私設秘書がいる。

 しかし、その中に会計や不正防止の専門的訓練を受けた者がいるとは限らず、また各秘書の日常業務は信じられないほど多忙を極めるのが普通だ。政治資金収支報告書の作成業務は、優先順位が低いとされることも多い。

 もちろん各政党にはコンプライアンスを担当する部局や顧問弁護士が存在しているが、マンパワー的に細部に目を行き渡らせることは難しい。

 そこで、国会議員一人一人が「会計監査や不正防止の専門家」を身近に置くためのインセンティブとして、国会法132条を改正し、第四の公設秘書(会計担当秘書)を新設するのだ。

 給与を国費から支給する代わりに、例えば弁護士、公認会計士、税理士、弁理士、行政書士、公認不正検査士などの専門家であることを会計担当秘書資格認定の条件にするのである。

 確かに人件費分の歳出は増える。しかし、「政治とカネ」をめぐる政権不信こそが政治そのものを弱体化させる。

 会計担当秘書制度の創設によって、日本の政治的コンプライアンスの水準が上がり、繰り返される「政治とカネ」の問題に終止符を打つ決定打になりうるのであれば、検討に値するのではないか。

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