「菅首相」が、緊急事態宣言の再発令に慎重なワケ

国内 社会 2020年12月30日掲載

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駆け巡った再発令情報

 12月25日、菅義偉首相は、政府の新型コロナ対策分科会の尾身茂会長を伴って、首相官邸で記者会見した。そこに至るまでの水面下の動きについてリポートする。

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「菅さんが尾身さんと一緒に会見するという話が前日昼過ぎに固まり、“緊急事態宣言がまた出るんじゃないか?”という話が一気に広まりました」

 と、政治部デスク。

「菅さんが宣言の発令を検討しているとか、尾身さんが一緒にいるのは細かいことを説明する必要があるからだとか、そんな情報が出回って、各社確認に追われていたようです」

 実際、「どこかのタイミングでカードを切って冬場でも感染者が減ることを日本として経験しておくのも一つの選択肢だと考えています」(和田耕治・国際医療福祉大学国際医療協力部長、医学部公衆衛生学教授)など、年内の宣言発令に触れる専門家の声もあった。

 しかし蓋を開けてみると、菅首相は「静かな年末年始」を呼びかけると同時に、新型コロナに関する特別措置法改正には積極的ではあったが、緊急事態宣言の再発令には慎重な姿勢を見せたのだった。

 再発令に慎重な姿勢について、官邸関係者によると、

「安倍さん(晋三前首相)が出した時に比べると、感染者が増える理由は割と見えています。生活を普段から共にしていない人たちと少なくない人数で集まって、長時間に亘って会食をするというのは感染者を間違いなく増やす要因です。それを家庭に持ち帰って家族に感染が急拡大しています。ですから、そういった会食の席を我慢してほしいとお願いすることにフォーカスすることにしたのでしょう。安倍さんの頃はそこに絞っていいのかハッキリとはしなかったので、宣言を発令せざるを得ませんでした」

 そして

「こちらの方がもっと大事なポイントなのですが、一度宣言を出してしまうと、いつ解除するのかという問題が必ず付きまといます。その“終わらせ方”が悩ましくて、宣言を出しづらいというのが官邸内の一致した考え方です。安倍さんの時に1度延長したことを菅さんは隣で見ていますからね」

受験シーズン到来

 自民党のある閣僚関係者にも聞いてみると、

「似たようなお願いは1カ月前から続けてやっているんですよね。夜間の飲食店への出入りを自粛してほしいとか、東京都が『5つの小』をアピールしたりとか。まあ小池さん(百合子都知事)がやると、パフォーマンスじみているから、国民にメッセージがちゃんと伝わらないという痛しかゆしな面があるんですが……。そういうメッセージが出ている一方で、『Go To』事業に菅さんはこだわって継続しましたよね。あれが原因で感染者数が増えたという言い方は軽々にはできませんが、危機感を伝えたいなら的確なやり方ではなかったのかもしれません、今となっては後の祭りだけどね。例えば、Go Toを利用し、高齢者の方々が5人とか6人の団体で新幹線に乗ってワイワイガヤガヤおしゃべりしながら、それでもコロナって怖いわね~みたいな会話をしているわけですよね、有効な手を打てないままここに至ってしまった感じがしています」

 先の官邸関係者はこう明かす。

「1月11日まで『Go To トラベル』は停止されていて、色んなアンケートでも、“今年は帰省を控える”という回答をした人がかなりの数にのぼっています。おのずと接触機会は減り、緊急事態宣言に近い状態の年末年始を迎えられるのではないかという希望的観測も正直ありますね。なにしろ宣言は何度も出せるものではない大事なカードですから、できれば温存しておきたいということです。新規感染者数が1日に1000人を超えることは想定内ですし、年が明けると、大学入学共通テストを皮切りに受験シーズンに突入します。その時期が緊急事態宣言と重なってもいいものなのかという議論も、当然あるんですよね」

 国民にお願いをし、祈るほかないということのようだ。

週刊新潮WEB取材班