厚労省に嫌われた「アビガン」 コロナ治療薬に承認されなかったのは“新参者”だから

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 新型コロナウイルスのワクチンが接種できるとすれば、副作用が不安という方はいるだろうか。読売新聞の3面には「スキャナー」という欄があり、ここに12月19日、「国内初申請 ワクチン 迅速審査 少ない臨床試験 海外例参考」という記事が掲載された。

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 読売新聞はワクチンの承認に関し《審査期間を通常の医薬品より大幅に短縮する「特例承認」を適用する》ことが決まっていると伝えた上で、《一般市民への接種に向けては多くの課題がある》と警鐘を鳴らした

 国際医療福祉大教授で、感染症学が専門の松本哲哉氏は読売新聞の取材に応じ、以下のようなコメントが掲載された。

《副作用も出ているようだ。国は拙速に承認の可否を判断せず、海外の事例も参考に慎重に手続きを進めてほしい。重い副作用が報告されたら、評価を変える必要があるだろう》

 同じ読売新聞(電子版)は、12月21日「アビガンの効果『確認するのは難しい』、審議会部会で継続審議…承認時期の見通し困難」との記事を配信した。

 今度はワクチンではなく、一時期は新型コロナの治療薬として期待する声があったアビガンに関する記事だ。

《厚生労働省の薬事・食品衛生審議会の部会は21日、新型コロナウイルス感染症の治療薬として承認申請が出されている抗ウイルス薬「アビガン」について、現時点では判断できないとして継続審議とすることを決めた》

(註:全角数字を半角にするなど、デイリー新潮の表記法に合わせた、以下同)

「強引な議事運営は困る」

 読売新聞の記事から、厚労省や審議会の専門家は「石橋を叩いて渡らなかった」と理解した方もおられるかもしれない。国は安全を最優先にしている──。

 アビガンの承認に関しては、朝日新聞が消極的な姿勢を明らかにしている。10月30日の朝刊に掲載された社説「コロナ治療薬 検証に堪え得る審査を」から一部をご紹介しよう。

《承認にあたっては有効性と安全性両面からの厳格な審査が求められる。スピード感は大切だが、スケジュールありきで進めるべきではない》

《アビガンは6年前に新型インフルエンザ治療薬として承認された。(略)今回の治験や臨床研究では、新型インフル向けに定められた用量・用法に比べ、1日の服用量は多く、投与の期間も長かった。総量が増えるぶん、安全性には一層の配慮が必要だ》

 もっとも、厚労省の薬事行政に詳しい関係者は、「報道から受ける印象とは異なり、審議会における実際の議論は『承認すべき』という意見も決して少なくなかったのです」と指摘する。

「『薬事・食品衛生審議会 医薬品第二部会』が議論を積み重ねてきましたが、承認を出してもおかしくない雰囲気になったことは事実です。ところが厚労省の担当者が『強引な議事運営は困ります』と、承認させないよう釘を指してきたのです」

 何しろ慎重な姿勢を示した新聞記事のコピーを、厚労省の担当者が審議会のメンバーに配っていたという証言もある。

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