神社本庁の“腐敗”をレポート 幹部の不倫騒動、土地ころがし疑惑で有名神社が続々離脱

国内 社会 週刊新潮 2020年12月10日号掲載

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元凶は田中総長体制

 この宇佐神宮の問題は全国の神社に大きな憂慮を抱かせたのだという。

「つまり神社本庁が全国の神社を家来のように扱い、強権的に統制しようとする態度が見え始めた。それで本庁に乗っ取られてはたまらないと、特に一部の大神社が脱退を考えるようになった」(前出のベテラン神主)

 神社本庁はこの状況に関し、「(離脱している神社の)それぞれの離脱理由については分かりかねます」(広報国際課)と答えるだけだ。しかし少なくない関係者は“神社本庁強権化の象徴”として、事務方トップ、田中恆清総長(京都・石清水八幡宮宮司)の名を挙げる。総長就任は2010年。神社本庁の総長職は、前述の評議員会で選ばれる理事の中から選任されるが、最長で2期6年を務めて引退というのが通例のところ、現在前例のない4期目に突入、“史上最長政権”のトップとして君臨している。そして確かに有名神社の相次ぐ離脱は、田中氏の総長就任後に発生した流れなのだ。

 今年6月、そんな田中氏が現役の神社宮司らに刑事告発されるという事件が起こった。告発の中心となったのは愛知県清須市にある日吉(ひよし)神社の宮司、三輪隆裕氏。理由は前述の土地ころがし問題によって、神社本庁の資産に損害を与えた背任行為を問うというものであった。この告発は9月、不起訴とされたが、今なお「神社本庁の民主化・正常化」を訴えて署名集めの運動などを展開する三輪氏はこう語る。

「あまりに長期化した神社本庁・田中体制は、明らかに腐敗しています。神社本庁は今や全国の神社をサポートするどころか、抑圧するかのような組織になってしまっている」

 そのような状況を生んだ背景のひとつとして三輪氏が指摘するのは、「安倍政権への度が過ぎる迎合、忖度」である。奇しくも神社本庁・田中体制の確立とほぼ同時期の2012年に成立したのが、憲政史上最長の内閣として今年9月まで続いた安倍晋三政権だった。以後、神社本庁は各方面から「日本最大の安倍応援団」と呼ばれてきた。

 実際、田中総長は保守系市民団体・日本会議の副会長。憲法改正にも賛成で、神社の境内で改憲賛成の署名集めが行われていたことなどは、一部で問題視された。また神社本庁の関係団体である神道政治連盟国会議員懇談会の会長は、ほかならぬ安倍前首相である。

 もちろん、神道とは天皇を祭祀王としていただく宗教で、また神社本庁は戦後のGHQの宗教政策に翻弄される形で生まれたという経緯もあり、基本的に保守的だ。改憲への賛成姿勢も、今に始まったことではない。

「2012年からの安倍政権で、田中総長たちは『これで本当に日本国憲法が変わるかもしれない』と思ったのでしょう。それで田中総長は政治運動に突っ走った。そこから神社本庁は強権的で異論を排除する、全体主義のおかしな組織になっていったのではないでしょうか」(三輪氏)

 三輪氏の見方を、前出の元神社本庁職員も追認する。

「田中総長はもともと実務家タイプでした。しかし第2次安倍政権の成立以降、どんどん保守に引っ張られていった印象がある。また近年、神道政治連盟の活動など、自民党の政治家と一緒になって何かやることばかりが神社本庁内部で評価され、神社や神道の未来をどう考えるんだといった議論が軽視されてきたきらいがあります」

政治ごっこからの脱却を

 瀬戸内海に浮かぶ広島県・因島(いんのしま)に、因島石切(いしきり)神社という神社がある。いや、あった。現在、神社の壁には、今年3月の役員会で宗教法人として任意解散の決議をしたとの「公告」が張り出されている。すでに神社に人気(ひとけ)はなく、神社入口の鳥居も、拝殿前の狛犬も撤去されている。

「見ての通りの過疎の島で、後継者がいない。江戸時代の囲碁の強豪、本因坊秀策(しゅうさく)の生誕地に建っている“囲碁の神社”で、島外からの観光客もよく訪れる神社だったんですが」(ある島民)

 この因島石切神社は、元から神社本庁には加盟していなかった神社だ。広島県内在住のある神主は語る。

「神社本庁に入っていれば、ほかの神社から神主が助けに来たり、運営に関して相談に乗ってくれたりして、つぶれることはなかったかもしれない」

 その意味では「神社本庁は神社界に必要な組織であり、『なくしてしまえ』とまでは思わない」と、先の三輪氏。問題は「今の体制が、あまりに強権的になり、腐敗の温床になっていること」(同)なのだ。

 現在日本中で進行する過疎化は、地方の中小神社の経営を深刻に脅かしている。「20~30年後には、全国の神社は半分くらいになっている」と語る神主もおり、「本来、神社本庁が“政治ごっこ”にかまけている暇はないはず」(三輪氏)なのだ。

 また前出の佐野氏は、「今の体制に問題があるならあるで、『では私が次のリーダーをやります』と手を挙げる人が現れるわけでもなく、長期化した体制に皆が忖度していたような実態もあった。いま必要なのは、神社とは、神道とは何か、将来どうなっていくのかを、多くの人が率直に議論すること」と言い、実際に全国の神主たちに議論を呼びかけている。しかし、こうした三輪氏、佐野氏らの活動に関する見解を神社本庁に問うても、「個々人の一行為・見解であり、特にお答えすることはございません」(広報国際課)と黙殺である。

 安倍政権なき後の安倍応援団は、今後真っ当な“神の道”へ回帰できるのだろうか。

小川寛大(おがわかんだい)「宗教問題」編集長
1979年熊本県生まれ。早稲田大学政経学部卒。宗教業界紙「中外日報」記者を経て、宗教ジャーナリストとして独立。2014年より宗教専門誌「宗教問題」編集委員、15年に同編集長に就任。

特集「幹部は『土地ころがし』に『不倫』! 有名神社が次々離反… 神の道を見失った『神社本庁』神々の黄昏」より

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