学術会議が行ってきた提言リスト 政策立案では意識されない?

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 1949年に設立されて以来、「学者の国会」と呼ばれてきた日本学術会議。任命拒否騒動でにわかに注目を浴びることになったのだが、

「その後、学術会議が船の航行に関する北海道大学の研究を、“軍事研究である”と中止に追い込んでいた過去が発覚。むしろ学術会議側が、科学技術研究における学問の自由を侵害している、と批判されました」(全国紙記者)

 だが、学術会議の“影響力”は、なにも理系分野に限ったものではない。

 実際、学術会議の会員は3分の1に当たる約70名が文系領域から推薦され、30ある分野別委員会のうち、10は文系の委員会が占めているのだ。

「今月10日、法務省が開催した『性犯罪に関する刑事法検討会』で参考資料に挙げられたのも、学術会議の法学委員会などがまとめた提言でした。2017年の刑法改正で強姦罪に代わり設けられた強制性交等罪について“暴行・脅迫”がなくとも犯罪が成立するよう、さらなる改正を求めたもの。文系領域である法学分野でも存在感を発揮した格好で、多くのメディアが取り上げました」

 一口に文系の委員会といっても、法学や経済学、経営学といった“実学”分野から、文学や史学、哲学などの人文系分野までさまざま。

 提言もいろいろだ。心理学・教育学委員会などがまとめた、

〈教育のデジタル化を踏まえた学習データの利活用に関する提言〉

 史学委員会による、

〈博物館法改正へ向けての更なる提言〉

 はたまた哲学委員会の、

〈人の生殖にゲノム編集技術を用いることの倫理的正当性について〉

 言語・文学委員会からは、

〈高校国語教育の改善に向けて〉

 などなどバラエティに富んではいる。

 もっとも、その影響力は“軍事研究”に対するものほど強くはないそうで、元経産官僚で政策コンサルタントの原英史氏も、

「確かに、政策実現の過程で学術会議の提言が参考資料として挙げられることもありますが、実際、ほとんど意識されません。政策立案に当たっては、別に審議会が設置されることが多いですし、学術会議の提言は屋上屋といった感じ。役所も政府もマスコミも議論しないようなテーマであれば、意味はあるかもしれません」

 だから不要論まで出てくる。

週刊新潮 2020年11月26日号掲載

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