キャバクラ「リレー方式」の“客引き”で初の逮捕者 現役客引きはどう見たか?

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 11月9日、東京・池袋のキャバクラ店を無許可で営業していたとして、会社役員の藤井兄治容疑者(47)が風営法違反の疑いで逮捕された。件の店は「リレー方式」と呼ばれる客引きを行っており、これに関わった男たちも逮捕されている。「リレー方式」の容疑で逮捕されるのは全国初のこと。作家の酒井あゆみ氏が、夜の街の客引き事情を取材した。

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 藤井容疑者が無許可で営業していたのは、池袋駅西口から劇場通りを渡った先、夜の店がひしめく一角にある「Club Riche」という名のキャバクラだった。藤井容疑者は、この店を別人の名義で経営していた。藤井容疑者に名義を貸したとして、高橋一輝容疑者(30)も逮捕された。店は昨年12月から今年9月にかけ、1億円以上を売り上げていたという。

 藤井容疑者は、池袋界隈ではかなりの有名人だったようだ。さる事情通によると、

「他の町では別の名前を使っていて、元ホストの男です。極真空手をやっていて、メールアドレスに『kyokushin』の文字を入れるほどの愛好家。摘発された『Riche』とは別のキャバクラの事実上のオーナーですし、加圧トレーニング店や焼き肉店など手広く手掛けています。なんだかんだで、数は10以上の事業をやっているじゃないかな……」

 逮捕された際は「システム開発会社役員」という肩書だったので、こちらも藤井容疑者の顔のひとつなのだろう。名義を借りた高橋容疑者との関係についてははっきりしないが、キャバクラ経営を公にしたくなくて、名義を借りたのではないかと言われる。

 逮捕が報じられた直後の週末に池袋を訪れたが、藤井容疑者が事実上のオーナーを務めているとされる別のキャバクラ店は、何事もなく営業していた。摘発された『Riche』から100メートルほどしか離れていない店である。

わざわざ「リレー方式」にする理由

 むしろ今回の一件で注目すべきは、「リレー方式」で逮捕者が出たことである。リレー方式とは、客をバトンよろしく、客引きの人間(キャッチとも呼ぶ)たちの間で回すことを指す。

 道行く客に声をかけた客引きが、次の人間に客を引き渡し、その客引きは最終的に店の人間に客を渡す。最終的な行先は、キャバクラやガールズバー等など、客の求めに応じてさまざまだ。読者の中にも、声をかけられて着いて行ったら次々と別の人間を紹介され、“たらい回し”にされた……という経験をお持ちの方がいるかもしれない。往々にして、こうして行った店はぼったくりのことが多いので、あまり良い思い出ではないかもしれないが。

 報道によると、客引き関連で逮捕された男たちは計6人。今年6月と8月の容疑だ。6人のうち2人は路上で活動していた客引きで、逮捕容疑は都迷惑防止条例違反(客引き行為の禁止)。残る4人は、客引きから連絡を受けた店側(『Riche』ということだろう)のスタッフで、こちらは東京都ぼったくり条例違反(客引き行為を用いた営業の禁止)容疑だ。役割が違うため、容疑も異なるわけだ。

 そもそも、最初の客引きがそのまま店に連れて行けばいいものを、なぜ、わざわざ「リレー方式」にするのか。池袋で客引きとして活動するAさんは、次のように解説する。

「いちばんはやっぱり、警察対策ですよね。今回逮捕されちゃったように、客引きは条例で禁止されています。当然、直接店に連れて行ったら捕まります。でも、路上で声をかけて客を他の人に引き渡すことは、客引き行為には当たりません。店は店で“お客さんを店に案内しただけ”と、俺たちとは関係ないと言い張ってしまえばいい。こういう理由で“リレー”がされるようになったのは、東京都で条例が制定された2000年頃からですかね」

 リレーであれば客引きにあたらないのでは――という客引きたちの言い分は、今後は通用しなくなる可能性が高い。ちなみにAさんに言わせれば「『リレー方式』なんて呼び方は報道で初めて知りましたよ」とのこと。客を繋ぐのは日常的に行っているから、わざわざ呼び方もなかったそうだ。なお、店側の容疑者たちは〈「客引きから紹介されていないことにすれば、取り締まりを受けないと聞いていた」などと供述している〉(11月9日配信「毎日新聞」)というから、Aさんの解説とも一致する。

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