コロナ禍で注目 「新幹線」の「換気装置」がたびたび止まる理由とは?

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最も強力な換気装置を搭載しているのは

 新型コロナウイルス感染症の拡大で鉄道車両の換気が注目されるようになった。国は鉄道車両の客室の換気について基準を定めている。基準によると、鉄道車両は自然換気といって窓や開口部から車内の空気を入れ替えるか、換気装置を用いて換気を行わなくてはならない。最も強力な換気装置を搭載している新幹線の換気装置で起こる「現象」について検証してみた。

 自然換気の場合、窓などの開口部の総面積は客室の床面積の20分の1以上としなければならない。

 一方で、換気装置の換気能力は旅客1人1時間当たり13立方メートル以上なくてはならない。

 なお、通勤電車のように混雑率が定員を超える鉄道車両の場合、換気能力は定員の2倍の旅客が乗車したときを基準とする。

 ただし書きが続いて恐縮ながら、自然換気だけ、または換気装置だけでいま挙げた換気能力を満足できない場合、両者を組み合わせてもよい。

 現在、通勤電車の多くは窓を開けて営業に就いている。これは換気装置だけでは定員の2倍の旅客が乗車したときに換気能力が不足するからだ。

 全国各地の鉄道車両のなかで最も強力な換気装置を搭載しているのは、新幹線の車両である。

 というのも、新幹線では客室をはじめとする車内の密閉状態を保ちながら換気を行えるよう、高い換気能力が求められているからだ。

 換気能力はたとえば、東海道・山陽・九州の各新幹線で用いられているN700系という車両では1時間当たり最大で1800立方メートルに達する。

 N700系で1両当たりの定員が最も多い車両は100人であるから、旅客1人1時間当たりの換気能力は18立方メートル以上、確保されている計算だ。

「音が止んだかと思うとすぐに動き出す」現象は?

 新幹線の車両の換気装置は多くは空調装置と一緒に働いていて、席に座っていてもゴーンとかウォーンといった低い音を立てているのがよく聞こえる。

 本来ならば機器の作動音は聞こえないほうがよいのだが、コロナ禍で換気に神経質になりがちな昨今、換気装置の働く音が頼もしく感じられるようになったという人も多いかもしれない。

 さて、新幹線の車内で換気装置の作動音に耳を澄ませていると、時折「音が止んだかと思うとすぐに動き出す」という現象が、結構頻繁に繰り返されることに気づく。

 これは気のせいではない。本当に作動を止めているのだ。

 何分おきとは言いづらいのだが、距離にして10kmから30km程度走るたびに起きる。

「換気装置はいつも目一杯働いているから時折休ませているのかな?」と思いたくもなるが、そうではない。

 新幹線の車両に搭載されている換気装置は連続換気装置というくらいタフで、数時間程度であれば問題なく動き続ける。

 答えを言うと、換気装置が時たま作動を止めてしまうのは、動かすための電力が止まってしまう、つまり停電が起きているからだ。

 となると、次のような疑問を抱く人もいるだろう。

「新幹線の車両が使用する電力は車両の上空に張られた架線から供給されますよね? 停電が起きているのならば、換気装置だけでなく、モーターは回転を止め、車内の照明も消えるはずです。まさかそんなことはないでしょうね?」

 新幹線ではそのまさかが起きていて、ほんのわずかな時間だが、モーターも動かなくなる。

 客室の照明は瞬時にバックアップ用のバッテリーからの電源に切り替えられるので消えることはないけれども、客室とデッキとの仕切壁に付いている車内案内表示器のなかには流れるテロップがいったん動きを止め、もう一度表示されるものも多い。

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