コロナ社会を生き抜くための「アンガーマネジメント」とは ツボ押し、手首の輪ゴムも効果的

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 最近の世の中、なんだか怒りっぽい人が増えたと感じ、世をはかなんでいる貴方。その通り、コロナ禍で人々はイライラを募らせている。そして、「まあ、賢明なる私は違うがね」と続ける貴方。いや、このご時世、誰もが苛立っているのである。「だから、私は違うって!」。ホラ、そうカリカリしないで──。

 新型コロナウイルスの影響が長期化して社会全体がギスギスしているからか、些細なことでキレる人々が不毛な争いを繰り広げた結果、「自滅」するというケースが増えている。その象徴的な例が、ホリエモンこと実業家の堀江貴文氏と餃子店主のバトルだ。

 事の発端は9月22日、「マスク未着用の方はお断りします」という張り紙をしていた餃子店を堀江氏が訪れたことだった。同行していたマネージャーがマスクをしていなかったことから、堀江氏はどうせ食事の時にはマスクを外すのだからいいのではないかと私見を述べて、それに対する店側の考えを尋ねた。しかし、店主は質問に答えることなく、「面倒くさいから帰れ」と入店を拒否したのである。

 この対応が不満だった堀江氏はFacebookで「マジやばいコロナ脳。狂ってる」などと批判を投稿。店の名前は伏せられていたが、周辺情報から程なく特定され、堀江氏のファンから店にイタズラ電話などがかかるようになってしまった。さらにこれを受けて、店主はブログなどに反論を掲載したが、その言葉遣いがかなり攻撃的だったためさらにバッシングを増長させる結果となり、家族が体調を崩して店は休業に追い込まれる。当然、堀江氏も「コロナで苦しむ飲食店に営業妨害をした」などと批判を浴びている。

 きっかけは些細なことだったにもかかわらず、ギスギスした応酬を続けていくうちに双方とも大きなダメージを受けるという典型的な「勝者なき戦い」になってしまったのだ。

 これは堀江氏という著名人が絡んでいたので世間の注目を集めたが、似たようなトラブルは実は日本のいたるところで起きている。

 例えば、10月1日、佐賀県佐賀市のディスカウントストアの駐車場で、56歳の男が口論になった相手に体当たりをして倒したあげく、顔に唾を吐きかけて逮捕された。原因はレジの割り込み。この店ではソーシャルディスタンスを確保するため、列に並ぶ客同士の間隔を広く取っていたのだが、それに気づかなかった男が割り込んでしまい、それを注意されたことでカッとなって暴行に及んだのだ。

コロナで8割がストレス

 さらに、「自滅」だけで済まない悲劇も報告されている。9月20日未明、長野県上田市で42歳の男が一緒に酒を飲んでいた顔見知りの男性の顔を殴って殺した事件である。喧嘩の原因は、被害者の親族が新型コロナウイルスに感染したことを42歳の男が誹謗中傷したことだった。

 上田市では8月下旬からクラスターが発生し、このエリアに長野県が「特別警報」を出すなど、人々の間で不安やイライラが募っていた。そんなギスギスした感情を抑えられずに爆発させたことで、一生かけても償いきれない重い十字架を背負ってしまったわけである。

 といった話を耳にしても、冒頭で触れたように聡明な読者諸兄の多くは「世の中には短気な人間がなんと多いことか」と、自分とは無縁の世界の話のように感じることだろう。子どもが「密」を避けて公園で遊んでいても、「けしからん」と学校に通報されるケースも多発したという。確かに、コロナによって社会全体がギスギスしているのかもしれないが、温厚な自分はそんな面倒なトラブルを起こさないし、巻き込まれもしないはずだ、と。

 しかし、それはあまりにも甘い認識だと言わざるを得ない。筑波大学の研究チームが約7千人を対象に新型コロナウイルスの感染拡大がメンタルヘルスに与えた影響を調査したところ、約8割がコロナでストレスを感じていることがわかっている。心がすり減ってしまえば、平時では制御できていた怒りが爆発しやすくなるのは説明の必要もないだろう。

 つまり、自分のことを温厚な人間だと過信している人であっても、コロナ禍の中で知らず知らずにストレスで心が蝕まれている可能性が高いということだ。それはすなわち、いつ誰が怒りで自滅した人たちのようになってもおかしくないということでもある。

 では、そうならないためにどうすればいいのか。「怒りを抑える」ことに尽きる。これまで紹介した通り、ギスギスした者同士の争いは日常のどんな場面でも起こり得る。ふらっと立ち寄った飲食店、レジに並ぶスーパー、さらには車の運転中など、これらを避けて生活することは難しい。そうなると我々にできるのは、ギスギストラブルに巻き込まれた時にできる限り事態を悪化させないことしかない。

 それはつまり、相手の怒りの火に油を注ぐような暴言を吐いてしまったり、暴力に走ったりしないよう、自分の怒りをクールダウンさせることである。何か不測の事態に巻き込まれた時に、実は最強の護身術は「怒りを制御する」ことなのだ。そんな考え方から、今、注目を集めているのが「アンガーマネジメント」である。

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