史上初、同一年の牡牝三冠馬同士の闘い デアリングタクト有利の理由とは

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 秋の天皇賞をアーモンドアイが制し、JRA史上最多の芝GIレース8勝の大記録を達成した。その興奮さめやらぬまま、世の馬キチたちは思いを馳せるのだ。今月末、ジャパンカップ(JC)の決戦に――。

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 10月25日の菊花賞。無敗での三冠制覇を達成したのが、あのディープインパクトを父に持つ牡馬(ぼ ば)コントレイルだ。

 その1週間前、18日の秋華賞。牝馬(ひんば)として、同じく史上初となる無敗での三冠制覇という偉業を果たしたデアリングタクト。

 芸能界のサラブレッド、タレントのDAIGOも、この2頭の活躍には大興奮。菊花賞のあと、

〈2020年大変な時代に二週連続の無敗の三冠馬。たくさんの希望をもらった。ありがとう!〉

 と、SNSに書き込んでいる。

「同一年に牡牝の三冠馬が誕生したのは日本競馬史上、初めて。その2頭の三冠馬が無敗をかけてまさに“雌雄を決する”となれば、競馬史に残る世紀の一戦となるのはまちがいない」

 と、ベテラン競馬記者。

「競馬ファン待望の対決が見られるのは、11月29日のJC。優勝賞金は国内レース最高の3億円です。すでにデアリングタクトは出走を表明しており、コントレイルも参戦を決めた」

菊花賞馬は…

 そんな注目2頭の血統を、競馬記者が解説する。

「コントレイルの父はディープで、斯界では知られた生産牧場の名門ノースヒルズ出身。菊花賞を無敗で三冠制覇したのは05年のディープ以来史上3頭目で、父に続く正真正銘の超エリートということになります」

 対するデアリングタクトは、“雑草育ち”である。

「母の父が名馬キングカメハメハなので、デアリングタクトの血統も決して悪くはない。でも、生まれが北海道にある小さな家族経営の牧場で、1年目では競りの買い手がつかなかった。翌年、1200万円の値がつきました。買取価格は一般的に1千万円を超えたら高額とされるので安くありませんがね。彼女がごく平凡な家庭に生まれた娘とすれば、コントレイルは良家のお坊ちゃんといったところ」

“名血統vs.雑草”の対決では70年代のタケホープvs.ハイセイコー、90年有馬記念のメジロライアンvs.オグリキャップ以来となる。

 さて、JCで夢の対決が実現するわけだが、勝つのはどっちか。競馬ジャーナリストの片山良三氏の予想では、

「デアリングタクトに分があると思いますよ。単純に個体だけ見ればコントレイルのほうが速いかもしれません。しかしコントレイルのほうがJCまでの期間が短くて不利です。コンディション調整1週間分のハンデがあるのですから」

 菊花賞は3000メートル、秋華賞は2000メートルという距離も関係ありとのことで、

「これまでコントレイルは、余裕で勝利したあとも走って帰ってくるほど元気でした。が、菊花賞は辛勝で、ゴール後すぐに走るのを止めたんです。前レースの疲労を考えても、走ったのが1000メートル短いデアリングタクト有利となる。いままで菊花賞馬が直後のJCを制した前例がないというのも一つのポイントですね」

 これらをひっくり返せば、“名血統”コントレイルは、とてつもなく深いインパクトを残せるわけだ。雑草魂はそれを阻止できるか。

週刊新潮 2020年11月12日号掲載

ワイド特集「マスクの裏側」より

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