中井貴一、鈴木京香、斎藤工…ことごとく共演ダメな人たちを集めた「共演NG」

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Netflixでドラマが大ヒットし、押しも押されもせぬ人気クリエイターになった設定

 時代劇出身の大御所俳優(里見浩太朗)と、その元付き人でニューヨークで研鑽を積んだ個性派俳優(堀部圭亮)。

 里見は大きな声と大袈裟な芝居で外連味たっぷり、堀部はニューヨーク帰りで雰囲気芝居にこうるさい。

 元は師弟関係だが決裂した設定だ。ふたりのいがみ合いには、役者論の温度差とジェネレーションギャップを盛り込んでいる。

 同じアイドルグループに所属していたが、犬猿の仲のふたり(小野花梨と若月佑美)。

 先輩後輩の関係だが、かたやアイドル、かたや女優業へ。反りが合わずことごとくぶつかる。

 さらに、同じイケメン俳優でも、戦隊モノ出身(細田善彦)と2・5次元出身(小澤廉)がライバル意識を燃やす(ここはちょっとよくわからない。戦隊と2・5次元って仲悪いのか?)。

 さもありなんと思いながらも、敵意剥き出しがあからさますぎて、やや騒々しい印象も(本当はもっと陰湿な手口で嫌がらせするんだよ、たぶん)。

 この「共演NGアベンジャーズ」の皆さんを一堂に集めたのが、実はテレビ東洋が依頼したショーランナーなる人物。脚本家でありながら、企画・キャスティング・宣伝も手掛ける市原龍(斎藤工)だ。

 Netflixでドラマが大ヒットし、押しも押されもせぬ人気クリエイターになったという設定。これもまた、さもありなん。

 斎藤工が、というか、その手の華やかでにわかな人物に丸投げするしかない、テレビ局の断末魔状態が。

 しかし、情報量がえげつなく多いドラマだ。舞台や人物設定が緻密なだけに、さらっと簡潔に見どころを伝えるのが難しい。

「共演NGっつったって、結局は架空の話で、本当のタブーにはつっこまないんでしょ?」と思っている人もいるかもしれない。

 そんな意地の悪い人は、ぜひ劇中の出役ではなく、裏方の人々のちょっとしたシーンに耳を澄ませてほしい。

 そこにテレ東の本音(というか真実)がさらっと込められているからな。

テレビ東洋の話だが、テレビ東京の話にしか聞こえない

 まず、報道局から異動してきたばかりの新人助監督(森永悠希)だ。

 ドラマや役者に対するリスペクトがほぼゼロ。中井と京香が昔出演し、最終回の視聴率が36・8%を記録した名作恋愛ドラマ「愛より深く」も知らないと平気で口にする。

 そうそう、テレビ局の人ってドラマを案外観ていなかったりするんだよね。そこ、リアル。しかも、森永は「テレ東ドラマ、深夜はアリだけど、ぶっちゃけ数字もそんなに取れてないし」と痛い現実を突く。そこな。

 さらに、ドラマ部長(岩谷健司)とプロデューサー(迫田孝也)のやりとりも生々しい。

「次のドラマがコケたら、テレ東唯一のドラマ枠は営業部にとられる」「領地没収だよ。テレ東からドラマ消滅。上層部はコスパのいい番組を求めてる」「身の丈に合わないこんな新社屋を建てるからだよ…」「悪魔(ショーランナー)に魂売るしかない」。

 テレビ東洋の話だが、テレビ東京の話にしか聞こえない。

「ドラマBiz」の消滅といい、新社屋といい、この自虐っぷり! テレ東のそういうところ、好き。そして、悪魔というのはつまり秋元康のことか、と妙に納得もいくわけで。

 医者・刑事・弁護士モノという定番ドラマに飽き飽きしている人には、この分類不能な「自虐珍味ドラマ」をぜひ味わってほしい。

吉田潮(よしだ・うしお)
テレビ評論家、ライター、イラストレーター。1972年生まれの千葉県人。編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。2010年より「週刊新潮」にて「TV ふうーん録」の連載を開始(※連載中)。主要なテレビドラマはほぼすべて視聴している。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年11月9日掲載

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