深田恭子、橋本環奈だけじゃない ドラマ「ルパンの娘」の楽しみ方

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引きこもりで天才ハッカーを演じる栗原類

 泥棒に警察、探偵の一族。構図のレイヤーが増えたし、第2話では深キョンがあっという間に出産までしちゃったよ!

 冗長に描かず、細かいことを気にせずバンバン進んでいく潔さ。泥棒一族の背景はわりと丁寧に細かく作り込むが、警察の方は超適当でちゃちゃっとすませる感じも清々しい。

 シーズン1で中途半端にあたたまったキャラクターを見捨てることもなく。薄幸のスナックママ・薄井佐知(遠野なぎこ)も登場したし、伝説の大泥棒だが華につきまとう、ある意味ストーカーの円城寺輝(大貫勇輔)も健在。

 突如歌って踊り出す「困惑のミュージカルシーン(カラオケ風の字幕つき)」も継続。新しさを取り込みつつも、定番はそれなりに守る。バランスがいいよね。

 個人的に着目するのは2人。

 まずはLの一族の長男でありながら、引きこもりで天才ハッカーという三雲渉を演じる栗原類。持ち味である美しさをここまで封印する愚行! なんて思っていたが、感情表現が苦手な役は実にしっくり。

 渉は中3の時に痴漢に間違われて高圧的な取り調べを受け、警察に対するトラウマがある。対人恐怖に潔癖、出来のいい妹への遠慮と諦観、まあ、なかなかに生きづらさを抱える人だ。

 ところが、シーズン2ではマッチングアプリに登録し、外へ出始めた。殻を破り、枠を超え、社会に一歩踏み出したのだ。ま、これがいろいろと騒動の発端になりそうなので、彼の成長(と挫折?)は楽しみのひとつでもある。

 日本のドラマでは、栗原の「超美形」が活かしづらかったのか、どちらかといえばホラーやファンタジー方面でスパイス的に使われてきた。

トリッキーな俳優・我修院達也の動き

「みんな!エスパーだよ!」(2013年・テレ東)では立っているだけでオカルト、超常現象に深みをもたせた。でも、この渉役はスパイスだけでは終わらない。間違いなく彼の代表作だ。

 衣装も、栗原だけ腹部が出ているのは、スタッフが彼の美しさを熟知しているからこそ、と信じている。

 で、もうひとり。シーズン2から登場した新キャラクター、北条家の執事・山本猿彦だ。

 つながった眉毛と、ひしゃげたカエル声……トリッキーな俳優・我修院達也である。麿赤兒・どんぐり・我修院ときたら、そりゃもう極彩色の玉手箱のようなもので、絵ヅラが痺れるキャスティングである。

 我修院といえば、旧芸名・若人あきらの時代が忘れられない。郷ひろみのモノマネで一世を風靡した後、熱海を舞台に謎の失踪事件を起こし、「自作自演」「狂言」と非難された。

 あれがもう30年近く前の話かぁとしみじみ。テレビでもいじられて終わることが多かったが、騒動の後、役者・我修院達也として生まれ変わったわけで。

 最も強く印象に残っているのは、映画「鮫肌男と桃尻女」。殺し屋山田役を演じた我修院は、不気味さと可愛らしさを兼備。

 主人公・鮫肌(浅野忠信)を狙うはずが、うっかり恋に落ち、最終的には救う役どころ。トランプ柄のチョッキを着て、ちょこまかと動く姿が妙におかしくて、そして切なかった。

 今回、環奈を守ろうとするも案外使えない執事の役だが、今後いい動きをするに違いない。たとえ画面の隅にいたとしても、我修院の動きは要チェックだ。

吉田潮(よしだ・うしお)
テレビ評論家、ライター、イラストレーター。1972年生まれの千葉県人。編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。2010年より「週刊新潮」にて「TV ふうーん録」の連載を開始(※連載中)。主要なテレビドラマはほぼすべて視聴している。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年10月29日掲載

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