妻夫木、吉高、おディン様らが血で血を洗う相続争い 「危険なビーナス」

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「品があるのに性悪」を体現する戸田恵子・麻生祐未・安蘭けい

 吉高はブッキーの異父弟・矢神明人(染谷将太)と結婚したが、行方不明になったので一緒に探してほしいと訴える。

 のほほんと結婚相手を探していたブッキーの目の前に、超どストライクな見た目の吉高が登場したもんだから、やる気スイッチ入っちゃって。ところが、染谷は莫大な遺産の相続人。ブッキーは因縁と憎悪が渦巻く、苛烈な遺産相続争いにどんどこ巻き込まれていく。

 この相続争いのメンバーがまあ濃くて、しかも複雑。え、誰がどれ? 叔母さんってことは母の姉妹? ちょ待て、養子もいるのか! と、多少混乱した方もいるはず。

 私も家系図ないとわからんなと思っていたら、TBSがちゃんとホームページに「相関図」と「家系図」をご用意。そこな! 相関図だけでなく、縦につながる家系図な! 家系図入れようと考えた人に猛烈感謝するわ。

 とにかく意地の悪そうな、もとい、手練れの役者陣を取り揃えました感が満載のキャスティング。

 特に、戸田恵子・麻生祐未・安蘭けいなんて、「品があるのに性悪」を体現する完璧な布陣で、遺産相続争いにぴったり。シルクのガウンと古いお屋敷が似合う池内万作しかり、婿養子感が体からにじみ出とる田口浩正しかり。

 そして、今回最高のキャスティングと思ったのが、おディン様ことディーン・フジオカである。

 矢神家の前当主の養子で、商才と謀略に長けた矢神勇磨役。高級そうなレストランを複数経営するやり手実業家という役どころは、おディン様にぴったり。しかもマジで性格が悪い!

 幼少時からブッキーをいじめていびり続けた天敵であり、相続争いの主導権を狡猾に握ろうとする。同じく養子の麻生祐未と組み、先回りして策を練り、ブッキーと吉高の信頼関係を壊そうとするのだ。

“塩気”の利いた中村アンのうまさ

 おディン様のあの横顔と細身のスーツ姿には、2億円くらいの保険をかけてもいいと思うくらい美しい。

 昔、よくあったよね。瞳に1億円かけた田中美奈子とか、胸に1億円かけた井上晴美とか。ま、バブル時代の戯言だけど。

 とにかく冷酷非道、優しさとか配慮とか憂いとは無縁、令和のスマートインテリ銭ゲバヤクザをおディン様が好演。「IQ246~華麗なる事件簿~」(2016)の執事役を超える適役でもある。

 しかも、ただの遺産相続にあらず。先週は池内万作が早々に殺されかけたし、今後も毎回予想外の展開が期待できる。それとは別で、個人的に3つの些末な着目点を。

 ひとつめは、動物病院の看護師・蔭山元美役(中村アン)の塩対応。妄想しがちで、のび太くんのようなブッキーに、塩っ辛い現実をぶつけるシーンが好き。

 遺産相続というおとぎ話の世界の中で、アンがひとりだけ同じ世界の住人と感じられるから。ふわっと粉かけてくるブッキーに対して一刀両断。「弱ったメスを狙うのは人間のオスだけです」。塩気の利いたアン、うまいよね。

 もうひとつは、ブッキーの「アンチ富裕層魂」だ。母親(斉藤由貴)がたまたま金持ちと結婚したことで、幼少期にはトラウマがてんこもり。

 富裕層特有の特権階級意識に辟易し、「見下す」「いじめる」「排除する」を経験した者としては、心の中に荒ぶる抵抗感がある。貫くのか、変質するのか、いずれにしてもブッキーがどうこの役を調理していくのか。楽しみである。

 最後は、染谷将太である。ええと、日曜の20時台は大河「麒麟がくる」で、童顔になまずヒゲはやして冷酷無比な武将・織田信長をやっとるわけですよ。こっちで登場すれば、20時から21時で早替わり&連打を楽しめるのだ。

 なんて、どうでもいいことしか書かないのは、この後の展開が予測不能で楽しみだから。

 高視聴率の前作と比べられて、「じゃないほうの日曜劇場」なんて呼ばせないよ。私はこっちのほうが断然好き。

吉田潮(よしだ・うしお)
テレビ評論家、ライター、イラストレーター。1972年生まれの千葉県人。編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。2010年より「週刊新潮」にて「TV ふうーん録」の連載を開始(※連載中)。主要なテレビドラマはほぼすべて視聴している。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年10月25日掲載

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