日本学術会議が北大の“学問の自由”を侵害 名誉教授は「なぜ中国を批判しない」と指摘

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“形式的”報道の罠

 任命を拒否された6人は、安保法制に反対を表明するなど、与党の自民党に批判的な考えを持つ人が少なくなかった。

 奈良林氏は「日本学術会議は税金が使われている以上、与党に有益な提言を行うべきだ」と指摘したのは前に見た通りだ。

 6人の任命を菅義偉首相が拒否したことに奈良林氏は理解を示す。もし6人が政府批判を続けたいのであれば、日本学術会議ではなく、自身が所属する学会で行うべきだという。

 更に任命拒否の問題で、かなりのメディアが「かつて政府は任命を“形式的”なものとした」と報道した。

 一例として、10月2日、朝日新聞の電子版が配信した記事の見出しだけをご紹介する。「学術会議『首相任命は形式的』内閣官房幹部、過去に答弁」というものだ。

「これは1983年の審議録に記載されているもので、中曽根内閣の時でした。確かに首相が会員の任命を行うのは“形式的”だと答弁しています。ところが、当時と2004年以降では会員候補の選出方法が異なっています。それを無視して議論を進めるのは誤解を招くのではないでしょうか」(同・奈良林氏)

小泉内閣の“罪”

 NHKのニュースサイト「NHK NEWS WEB」は10月8日、「日本学術会議 会員の選出方法 変遷は」の記事を配信した。

 この記事によると、1949年の設立からは科学者による大がかりな選挙で選出されていたという。だが、組織票の問題が浮上。1984年に学会ごとに候補者を推薦し、それに基づいて総理大臣が任命する方法に変わった。

 実は、「選挙」から「推薦」に変更したのが中曽根内閣だった。何度も報じられた“形式的”という説明は、この問題を国会で話しあっていた時に飛びだしたものだ。

 ところが新しい選出方法も、《学会の仲間うちで会員を引き継ぐなれ合いなど》が問題視されるようになったという。そこで小泉内閣が2005年、現在の「日本学術会議210人の現役会員と約2000人の連携会員が推薦、選考委員会を経て学術会議が最終的に絞り込む」という方法に変えた。

「両方の制度を比較すると、私は学会推薦のほうが優れていたと考えます。やはり学会では、学者の研究内容から査読を受けた正規の学術論文の件数や、その論文の引用件数などの学事術的業績はすべてオープンとなっているのです。そのような科学技術者の学会で皆が認める学者を学術会議に推薦していれば、業績のない学者は選ばれません。首相の任命まで何も問題ないはずです」(同・奈良林氏)

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