「JR東日本」終電30分繰り上げの理由とは? これまでの終電の推移を辿って分かること

国内 社会 2020年10月18日掲載

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1本の列車を1km走らせたときの経費は759円

 JR東日本の深澤祐二社長は7月以降、事あるごとに会見で終電の繰り上げについて言及してきた。詳しい状況は本稿を執筆している10月中旬の段階では未定ながら、いままでの発言をまとめると、対象となるのは東京駅を中心とした約100km圏内、つまり首都圏全域のほぼ全路線だという。

 現在、高崎線の終電となる上野駅23時46分発の普通列車が終点の高崎駅に到着する午前1時37分を筆頭に、午前1時過ぎまで運転される列車は数多い。

 しかし、深澤社長によると2021(令和3)年3月のダイヤ改正で終電は30分程度繰り上げられるそうで、なおかつ午前1時までに列車の運転を終えたいとのことだ。

 終電を繰り上げる動機について、深澤社長は2つの理由を挙げた。

 1つは旅客が減少しているからというもの、もう1つは深夜に線路のメンテナンスを行う時間を確保したいからというものだ。

 最初の理由から説明すると、終電の旅客はここ何年かで減りつつあり、新型コロナウイルス感染症の拡大で一気に減ってしまったからだ。

 公共交通機関なのであるから旅客が減っても列車を走らせるべきという意見もあろう。

 しかし、コロナ禍によってJR東日本の業績は急降下し、2020年度の連結業績は5000億円もの営業損失と、同社設立以降初めての赤字決算が見込まれるとなると、そうも言ってはいられない。

 国の統計から求めると、2017(平成29)年度にJR東日本が1本の列車を1km走らせたときの経費は759円であった。

 先ほど例に挙げた高崎線の終電が走る距離は上野―高崎間の101.4kmであるから7万6963円だ。

 いっぽうで、同社が1人の旅客を乗せたときに得られる収入は平均283円なので、少なくとも272人は乗らなければ赤字になってしまう。

 高崎線の終電は途中の籠原駅までは15両編成、籠原駅からは10両編成で走る。15両編成の場合は1両に平均18人、10両編成の場合は1両に平均28人それぞれ乗ってもらえないと儲からないのだ。

線路のメンテナンスを行えるのは3時間余、人材難…

 コロナ禍以前は終電が赤字でもほかの列車が利益を上げてくれたから問題はなかった。

 だが、緊急事態宣言の解除後となる2020年9月の時点でも、旅客から得られた収入が前年と比べて49・1%と半分にとどまるという非常事態では悠長に構えてはいられない。

 終電が走る時間帯は乗務員や駅員といった社員に深夜勤務手当を支払わなければならないし、宿泊勤務となるので仮眠用の施設を用意する必要も生じる。

 世界有数の鉄道会社であるJR東日本とて負担は大きいのだ。

 もう1つの理由である線路のメンテナンスについても事態は深刻だと言える。

 線路のメンテナンスとは、レールやまくらぎ、そしてこれらを支える道床と呼ばれる砂利や砕石といった軌道、それから電車に電力を供給する架線といった電力設備、ほかにも信号や列車無線といった設備などの保守作業を指す。

 大都市の各路線では列車が多数運転されていて、たとえば2020年3月に開業した高輪ゲートウェイ駅には山手線、京浜東北線合わせて平日に1日1137本もの列車が発着するため、いま挙げた設備の消耗は極めて激しい。

 念入りなメンテナンスを怠ると、軌道は歪んで乗り心地は悪くなるし、架線は切れやすくなる。

 いっぽうで、線路のメンテナンスを行える時間は大都市の路線の場合、終電の運転後から早朝の始発電車が走るまでのおおむね3時間余りしかない。

 しかも、昨今の少子高齢化により、こうした作業に従事する人の数が足りない状態が続いていて、現状のままでは列車が運転されていない間に作業を終えることができない恐れも生じた。

 終電の繰り上げは線路の保守作業を取り巻く環境の改善はもちろん、安全で安定した列車の運行を維持するためにも欠かせないのだ。

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