「東証」取引全面停止の“被害者”とは 外国人投資家の流出、損害賠償に発展する可能性も

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 山手線が運休になったら「ウン万人の足に影響」と報じられ、停電になればそのエリアと世帯数がニュースになる。では、10月1日に東京証券取引所がシステム障害で終日ダウンしたことによる被害額と被害者は?

「まずは証券会社にしてみると、取引手数料が入らなかった。特にネット証券は、デイトレーダーからの手数料で収益を上げているので、影響大だったでしょう」

 そう語るのは経済評論家の山崎元氏である。

「顧客の対応にも追われたでしょうし、市場再開時のシミュレーションのために割いたコストも含めると、どれだけの損かわからない。今回のことを“祝日が1日増えただけ”と軽く見る人もいます。ただ本当に祝日なら、その日に売買のポジションは持たないわけで、丸1日何もできなかったのですから、損したと思う人も当然いるはずです」(同)

 だが一方で、株式評論家の植木靖男氏はこう考える。

「得るべき利益を逃したと考える人もいるでしょうが、反対に、取引があったら損をしていたかも知れない人は、その損を免れたとも言える。損害額を確定するのは難しいでしょう」

 今回、投資家たちが特に騒ぎ立てなかったのには別のワケもありそうだ。

「9月30日の終値から、問題の10月1日をまたいだ2日は109円68銭円高で始まりました。幸い値動きは小さかったんです。もしその間にニューヨークで何かが生じ、例えば日経平均が500円も下がったとなれば“手仕舞う機会が失われた。大損害だ”と大騒ぎになったはず」(山崎氏)

 何より辛くも幸いだったのは、トランプ大統領が新型コロナに感染したと明らかになったのが、日本時間2日午後だったこと。

「仮にニューヨーク市場が開いている間にあの一報が流れれば、向こうで株価が大きく下がり、東京市場でも値下がりしたところから始まったでしょう。ウラを返せば、現実問題として、市場関係者はずっと『ニューヨークで何も起こりませんように』と祈っていたと思いますよ」(同)

 やはり東証の責任は重く、「今後、損害賠償の訴訟が起きてもおかしくない」とは山崎氏。先の植木氏も、

「アジアでは上海取引所などの伸び率が高く、今度の件で外国人投資家が益々そちらに流れてしまうかも。信用失墜の代償は大きい」

 技術大国の看板が泣く。

週刊新潮 2020年10月15日号掲載

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