これから「人食いグマ」が増える 「シカ」とのヤバイ関係にも問題あり

国内 社会 2020年10月9日掲載

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 環境省によると、2019年度にクマに襲われた人は全国で157人。過去10年で最多を記録した。今年は4月から7月にかけて7748件の出没が確認されている。森林ジャーナリストの田中淳夫氏は、クマの生息数は年々増えていると警鐘を鳴らす。

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 クマは、かつて九州にもいたが、近年は目撃情報がなく、現在は主に本州と北海道に生息している。本州にはツキノワグマ、北海道にはヒグマが生息している。ツキノワグマは体長が110~130センチで体重はオス80キロ、メスが50キロ。ヒグマは体長200~230センチで、体重は150~250キロにも達する。どちらも走る速度は時速50キロと俊敏だ。

 富山県では、今年1月から8月末までにクマに襲われて怪我をした人は5人で、2004年から統計を始めて以来最多のペースという。北海道の新ひだか町では、クマの目撃情報が7、8月の2カ月間で34件と、例年の2倍を記録している。

 8月26日には、岩手県八幡平市田山地区の山林で、クマに襲われたと見られる72歳の男性の遺体が発見された。

 クマによる人身被害の多い秋田県では、7月8日から8月末まで発令していた「ツキノワグマ出没に関する注意報」を、9月末まで延長した。目撃件数が例年より多く、農作物の食害が相次いだためだ。とにかく、クマが増えていることは間違いなさそうだ。

実態は10万頭

「昨年のクマの捕獲数は5900頭で、過去最高でした」

 と解説するのは、田中氏。同氏は10月10日に『獣害列島 増えすぎた日本の野生動物たち』(イースト新書)を出版する。

「ツキノワグマの生息数は、50年前は6600頭でした。1992年には1万頭前後、2010年には2~3万頭と推定されています。ヒグマは、90年代で2000~3000頭。2014年には約1万頭と、この20年で2倍以上に増えています。もっとも、毎年5000頭も捕獲しているのに、これだけ増え続けているわけですから、実際は5万頭、いや10万頭いる可能性がありますね」

 なぜ、クマが増えているのか。

「日本の森林は50年前まではげ山が多かったのですが、植林が進んで木が増えました。1980年から90年にかけて林業が衰退したことで、木の伐採が大幅に減っています。つまり、木の実など、クマのエサが豊富になったため、クマも増えたわけですね」

 クマは木の実よりも、人間の作った野菜や果物を好んで食べるという。

「一般的にクマが人里に現れるのは、ドングリが不作だからと思われています。実はそうではありません。ドングリよりも野菜や果物の方が美味しいからです。畑には、農業廃棄物が沢山あります。出来の悪い野菜や、作り過ぎて廃棄した野菜をクマは喜んで食べます。また、りんごやみかん、桃なども好物です。それらがクマを人里に引き寄せるのです」

 秋田市の果樹園で8月10日、りんご約250個がクマに食い荒らされた。クマが民家に侵入するケースもある。8月18日、岩手県の大船渡市の民家にクマが玄関の引き戸を開けて侵入、冷蔵庫にあった果物を持ち去った。

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