ペヤングに“食べ物で遊ぶな”の声 アップルパイ風味を発売する構造的な問題とは

ビジネス 企業・業界 2020年10月6日掲載

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 9月末に発売された「ペヤング アップルパイテイスト やきそば」が“まずい”と話題になっている。あの朝日新聞もが『再現度は素晴らしいが… ペヤングにまたも衝撃の新商品』(10月1日付朝日新聞デジタル)と取り上げているほどだ。しかしその一方、否定的な声も聞こえてくる。

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 1975年に発売されたペヤングからは、2012年の「激辛」のヒットを機に、現在までに300種類以上の派生商品が登場してきた。今年だけ「牛タン塩」や“胸やけにご注意ください。”と謳う「豚脂MAX」、「黒ゴマMAX」や「超超超大盛GIGAMAX納豆キムチ」など、その数は10種類を超える。過去の変わりダネ商品でいえば、塩味ベースの「パクチーMAX」(16年)やイチゴかやくを用いた「チョコレート ギリ」(17年)、髪に良いとされる海藻類を使ったコラボ商品の「スカルプDやきそば」(18年)、2142キロカロリーの「超超超大盛GIGAMAX」(18年)、きらきら輝く「金粉やきそば」(19年)などが挙げられる。

 製造販売元のまるか食品が取材に答えた記事『ギガマックス爆誕 なぜ「ペヤング」は攻め続けるのか』(日経クロストレンド18年8月1日配信)によると、変わりダネ商品を投入する狙いはずばり、話題作りにあるようだ。この記事では「ギガマックス」を例に〈ホームページにアップしたその日に、まとめサイトに記事にしてもらい、それがTwitterでリツイートされて、その週末には「サンデージャポン」「めざましどようび」などの番組に取材していただきました〉と説明している。

 りんごスライスの「かやく」を使用しアップルパイの味を再現したという今回の商品も、ネットニュースのみならず、地上波の「とくダネ!」(フジテレビ系)で取り上げられるなど、大きな反響を呼んだ。SNSでは「まずい」「思ったよりまずくない」といった意見で盛り上がりを見せてもいる。

「ペヤングが行っているのは、『バズマーケティング』と呼ばれる手法ですね。ネットで話題になりそうな商品を投入し、口コミで拡散してもらうことで、広告費をかけずに宣伝するやりかたです。変わりダネ商品は定番化させませんから、まずくていい。物珍しさで一回買ってもらえればよく、『ペヤング』の名そのものが広まれば成功なわけです。新作が出るたびにYouTubeに『食べてみた』系の動画が出るのはもはや定番です」(ネットニュース記者)

 カップ焼きそば市場でライバルとの差別化を図る手法ということだろうか。とはいえ一連の変わりダネ商品には〈ペヤングは食べ物で遊ぶな〉〈ペヤングはどうしてこの企画を通したの?〉といった否定的な声も少なくない。少し食べただけで捨てた、無駄になるだけという主旨の意見も当然出ている。

 食品ロスの専門家の考えはどうか。NPO法人「日本もったいない食品センター」の高津博司代表理事は、業界の構造的な問題を指摘する。

「話題性を狙う売り方そのものは否定しません。コンビニエンスストアなど小売業の棚を見ると、ごくわずかな超定番商品を除けば、つねに新しい商品が並んでいます。消費者が目新しい商品を求めるため、メーカーは棚の取り合いの状況になっているのです。お店に置いてもらうには、やはり話題になる、目新しいものをメーカーは開発しなければならない事情があるのです。『ガリガリ君』(赤城乳業)が出していたコーンポタージュ味も同じ理由でしょう」

 さらに言うと、ペヤングの「アップルパイテイスト」の隣には、定番の「ソースやきそば」が置かれていることが多い。変わりダネ商品を出せば定番商品もあわせて棚に置かれるため、メーカーとしては購買チャンスが増え、さらにライバル社の商品を売り場から“排除”するメリットもある。

 ただし“奇抜”な商品は、売れ残ってしまう場合が多いようだ。

「私たちの団体では、メーカーや問屋さんから廃棄処分になる食品を仕入れ、福祉施設などに寄付する取り組みを行っています。ジャンルとしては飲料が多いのですが、いわゆる定番商品が廃棄扱いになることは少ないですね。キャンペーンパッケージ商品や、定番の500mlより少ない容量の商品、そして限定味のものが対象になりがちです」(高津代表理事)

 企業の事情と食品ロス……「アップルパイテイスト」のペヤングからは、業界の根深い問題が見えてくるのだ。

週刊新潮WEB取材班